乳中ムチンタンパク質遺伝子の縦列反復配列多型と乳中体細胞数との関連
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要約
ホルスタイン種の乳中ムチンタンパク質遺伝子Muc1のVNTR領域のDNA構造が明らかになり、乳中ムチンタンパク質の機能特性を乳中体細胞数を間接的指標として比較すると、Muc1-VNTRの繰返し数の異なる3種類の多型間において有意な差が認められる。
- キーワード:ホルスタイン種、ムチン、Muc1、VNTR、乳中体細胞数
- 担当:北農研・畜産草地部・家畜育種研究室
- 連絡先:電話011-857-9270、電子メールnymmt@affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
乳中に存在するムチンタンパク質(乳中ムチン)は乳脂肪球皮膜上に発現している高分子量の糖タンパク質であり、その主たる機能は感染抵抗性等の非特異的一次免疫である。乳中ムチン遺伝子(Muc1)はタンパク質翻訳領域(エクソン2)に60塩基の縦列反復配列(VNTR:variable number of tandem repeat)構造をもつことが特徴である。そこで、ホルスタイン種のMuc1-VNTR領域を中心に遺伝子構造を解析するとともに、乳中ムチンの機能的特性においてVNTRの異なる繰返し数の間で差異があるかどうかを、乳中体細胞数を間接的な機能性指標として用いて検討を行う。
成果の内容・特徴
- ホルスタイン種においてMuc1のエクソン1からエクソン6までの約3,000塩基のゲノム配列を明らかにした。Muc1-VNTRは60塩基が繰返す規則性を保持しつつ、塩基配列の異なる数種類の単位が繰返している構造である。北農研牛群のホルスタイン種では、PCR産物長からの推定で繰返し数が9、12、13回(VNTR9、VNTR12、VNTR13)の割合が最も多く確認される。
- Muc1-VNTR領域のPCR産物を制限酵素PvuIIで消化しRFLP(restriction fragment leng-th polymorphism)タイプを検出すると、VNTR9はタイプII、VNTR12はタイプIII、VNTR13はタイプIにそれぞれ対応し区別される。
- 糖タンパク質では結合する糖鎖が機能性発現に重要な役割を担っているが、乳中ムチンにおける糖鎖の結合部位を推定するとMuc1-VNTR領域のアミノ酸配列を含む領域と一致する(図1)。
- 北農研牛群で主として検出された3種類のVNTR繰返し数(VNTR9、VNTR12、VNTR13)における平均乳中体細胞数は、VNTR9<VNTR13<VNTR12の順で多く、分散分析(一元配置)では有意な差(p<0.01)が認められる。平均リニアスコアにおいても同様の結果であり、リニアスコア5以上の出現頻度もVNTR12は他より高い。一般牛群のリニアスコアにおいてもVNTR12は他より高い値を示した(表1)。
成果の活用面・留意点
- 乳中ムチンの機能的特性とMuc1-VNTR多型との関連性を解明する上での基礎的知見として活用できる。
- 本試験は3種類のVNTR間で乳中体細胞数を比較検討したものである。VNTRの繰返し数の出現頻度は牛群により異なることが考えられ、他の種々のVNTR型を含めた総合的な検討が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:ウシミルクムチンのミニサテライトDNA構造とタンパク質の多型解析
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2002年度
- 研究担当者:山本直幸、西浦明子、富樫研治
- 発表論文等:1)山本(2002)DDBJ/EMBL/GenBankデータベース、Acc.No.AB084273、AB084274、AB084275.