カンショ塊根のβ-カロテンとα-トコフェロールの同時定量法

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要約

紫外可視検出器および蛍光検出器を使用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、カンショ塊根のβ-カロテンとα-トコフェロールを一度の分析で同時に定量することが可能となる。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・畑作物変換利用研究室
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:食品、作物生産、流通加工、畑作
  • 専門:加工利用
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

カンショを広くアピールするためにはその有用成分の含量を明らかにする必要がある。対象となる成分が複数ある場合、通常は成分ごとに独立した分析操作をともなうので、分析時間短縮のためには複数成分の同時定量が望ましい。そこで、カンショ塊根中の有用成分であるβ-カロテンとα-トコフェロールの含量を測定するために、HPLCによる同時定量を検討する。

成果の内容・特徴

  • 紫外可視検出器の下流側に蛍光検出器を接続したHPLCシステムを使用する。β-カロテンの定量は紫外可視検出器により、また、α-トコフェロールの定量は蛍光検出器により行なう。カラムは通常の逆相系ODSカラム、移動相はメタノールを使用する(図1)。
  • 成分の抽出は、塊根由来の粉末をブチルヒドロキシトルエン(BHT)含有エタノール、次にBHT含有n-ヘキサンで処理し、 水を加えて遠心した後、 上層を採り窒素ガスで溶媒を留去する。HPLC用試験液はBHT含有テトラヒドロフランの溶液とする。
  • 1検体あたり16分以内に、α-トコフェロールおよびβ-カロテンの同時定量ができ、分析時間の短縮および溶媒使用量の軽減において利点がある(図2)。

成果の活用面・留意点

  • カンショ塊根をはじめとする作物中の抗酸化性ビタミンの含量測定の一手法として活用できる。
  • α-カロテンとβ-カロテンが分離されるので、 α-カロテンが含有される試料についても両カロテンおよびα-トコフェロールの同時定量ができる(図3-A)
  • 逆相系ODSカラムとメタノールを使用する本条件では、トコフェロールの異性体であるβ-トコフェロールとγ-トコフェロールが分離されない(図3-B)。 従って、これらの異性体の個別の含量については他の条件で測定する必要がある。

具体的データ

図1 β-カロテンとα-トコフェロールの同時定量に使用するHPLCの概略

 

図2 カンショ(九州114号)の塊根の抽出物のクロマトグラム 図3 市販の標準物質のクロマトグラム

 

その他

  • 研究課題名:カンショのビタミン、ミネラルの特性評価
  • 予算区分:大型別枠(新需要創出)
  • 研究期間:平成9年度(平成6~9年)