研究活動報告

九州沖縄果樹研究会分科会(落葉果樹)にて、「温度測定における強制通風筒利用」に関する講演を行いました

情報公開日:2023年4月14日 (金曜日)

日時

令和5年4月6日(木曜日)13時30分~16時30分

場所

九州沖縄果樹研究会分科会(落葉果樹)
講義形式:農研機構内Web会議室からオンラインによる講義

参加数

16名( 内訳 : 公設試験場12名、大学3名、農研機構1名)

講師

農研機構 中日本農業研究センター 転換畑研究領域 栽培改善グループ 上級研究員 臼井靖浩

内容

近年、データ駆動型農業を進める上で、様々なセンシング技術の利活用および開発が進められています。しかし、センサー等の計測機器の高精度化や開発のみで、十分な観測ができるとは限りません。特に農耕地のようなフィールドにおいては、センサー等を設置すれば観測ができるほど簡単なものではありません。フィールドにおいて計測機器等の性能を発揮させる改良や仕組みづくりが必要不可欠であり、計測技術と十分なフィールドワーク経験の双方が求められます(臼井, 2017)。しかし、センシング技術を利活用する上で、計測機器等の性能を発揮させる改良や仕組みづくりを理解している研究者・技術者が少ないのが現実です。そのため、農耕地でのセンシングや観測経験の少ない研究者・技術者らを対象に、臼井上級研究員がこれまで行ってきた農耕地における環境モニタリングやセンシング技術開発に関する経験とそれらの生かすためのノウハウについて、研修会を開催し、講演を行いました。

講演では、九州沖縄果樹研究会分科会(落葉果樹)のメンバーらを対象に、現在取り組んでいる樹園地における気温測定の問題点やその解決方法について解説しました。気温測定を正確に測定するには、モーターファンによって常時空気を強制的に循環させる強制通風筒に、温度センサーを格納して測定する必要があります。臼井上級研究員は、岡田・中村(2010)により紹介されている安価で自作可能な強制通風筒に、一部改良やアレンジを加えた岡田・中村式強制通風筒臼井バージョン(仮)の作成方法について解説しました。これまでに強制通風筒の作成方法について解説している文献はありますが、「設置する際に電源がない農耕地でどのように電源を確保するのか?」、「設置や観測の際の注意すべき点はどのようなことがあるのか?」といった疑問が、センシングおよび観測経験の少ない研究者・技術者を悩ませる原因の一つとなっていました。そこで臼井上級研究員は、強制通風筒の作成方法に加え、普及面での問題となる電源の取り方、設置や観測の際の注意事項、観測や工作等のノウハウについて、丁寧な解説と指導を行いました。

参加者からは「電源確保は悩みの種だったので非常に参考になった」、「資料も詳しくまとめてあり、論文等では触れられていない細かなアドバイスをいただけたので、とても参考になった」等の感想が寄せられました。

参考文献
臼井靖浩(2017)水田の物理環境計測. 計測技術, 45(7) : 6-10.
岡田益巳・中村浩史(2010)温度の正しい測り方 (1) 通風式放射よけの作り方. 生物と気象, 10 : A-2(1-5)

当日の様子

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