研究活動報告

第69回日本作物学会賞を受賞しました

情報公開日:2025年10月30日 (木曜日)

受賞年月日

2025年3月28日

業績

イネの高温障害を軽減する開花時刻と登熟に関する生理生態的研究

受賞者

石丸 努(中日本農業研究センター 水田利用研究領域 作物生産システムグループ)

概要

米は世界の約半分の人口にとって主食である重要な食糧である。増加し続ける世界人口を養うためには、さらなる米の増産が必要であるとともに、近年進行著しい地球温暖化において、我が国の玄米品質は著しく低下している。地球規模で高温ストレスによる不稔発生を通じた収量低下も懸念され始めた。石丸上級研究員は、高温ストレス環境下におけるイネの収量や品質の安定化を目指し、登熟期の貯蔵物質蓄積に関する基礎的研究および高温ストレスによる玄米品質低下の生理生態的研究を行うとともに、高温ストレスに最も脆弱とされる開花期の高温不稔発生を軽減する開花特性に関する研究に取り組んできた。特に開花時の高温不稔を軽減する方策としてSatake and Yoshida (1978)により提唱された、開花時刻を気温の低い早朝にシフトすることで開花期の高温回避性を向上させる「早朝開花性」の理論を、野生種Oryza officinalisを遺伝資源とした早朝開花系統(EMF20)を用いて実証し、さらに早朝開花性の量的遺伝子座qEMF3を導入した世界で初めてとなる早朝開花性準同質遺伝子系統の育成を主導した。その後、国際稲研究所 (IRRI) と連携するなど世界的な視野での研究を展開し、高温ストレス研究に新たな局面を切り拓いた。これらの成果は、今度進行が懸念される温暖化の中でのイネの安定生産に地球規模で貢献する可能性が高く、日本作物学会賞を授与するに値する研究業績と評価される。





-早朝開花イネをみている様子-
左:石丸上級研究員、
右:佐竹徹夫先生
(佐竹氏:早朝開花イネによる高温不稔回避を
提唱した元北海道農業試験場の研究員)