研究活動報告

令和3年北農賞を受賞

情報公開日:2022年1月 5日 (水曜日)

公益財団法人北農会主催の北農賞贈呈式が、2021年12月16日(木曜日)に札幌市内のホテルで開催され、農研機構北海道農業研究センターは報文部門および技能部門で栄えある北農賞を受賞しました。

報文部門

受賞業績名

気象データに基づくワイン用ブドウ栽培支援システム (北農 第88巻第2号 掲載)

受賞者名

農研機構 北海道農業研究センター 根本 学

業績の概要

北海道では、近年、ワイナリーが増加し、日本ワインの生産が盛んになってきています。2018年にはワインにおける地理的表示(GI)として「北海道」が指定され、道産ワインのブランド化の進展が期待されます。一方、ワイン用ブドウは不足しており、生産拡大と安定生産が求められています。栽培管理(防除や除葉など)、特に、開花期の防除は収量を大きく左右しますが、その時期は年々の気象の違いにより2週間程度変動します。開花期などが予測できれば、適切な栽培管理の有効な情報となります。
本報では、ワイン用ブドウの生育ステージ予測式、および、生産者がリアルタイムで利用できる情報システムの構築について記しました。まず、北海道、山梨県、長野県、広島県の圃場など、のべ30地点の気象データを蓄積しました。その気象データから、ケルナー、ツバイゲルト、山幸、シャルドネ、ピノノワールなど10品種の生育ステージ予測式を構築しました。推定精度は、開花期で2.4日、ベレーゾン期で5.8日です。メッシュ農業気象データを使用できますが、気象観測装置を設置すると圃場の気象データを利用して生育予測が可能となり、精度が向上します。気温経過が平年値よりも大きく異なる年でも、約1月前には1週間以内の予測誤差で開花日を把握することができます。生育データとして「萌芽期」を入力すると、「開花期」と「ベレーゾン期」の予測日を表示する情報システムです。特に、経験の少ない新規就農者や、大規模圃場、分散多圃場管理では、作業の省力化に有効と考えられます。今後、推定精度の向上、他品種の予測式の構築、果汁成分予測式の構築が期待されます。

受賞者写真
報文部門受賞者 : 根本 学 氏

技能部門

受賞業績名

深く絡まる根茎を堀取る薬用作物収穫機の作製

受賞者名

農研機構 北海道技術支援センター 國岡 浩由

業績の概要

薬用作物であるカンゾウは、薬効部位が地中深く約40cmに存在し、また、根茎が強固に絡み合っているため、収穫は、これまで、油圧ショベルにより堀り上げ、土砂の分離および根茎の切断は手作業で行っていました。このように機械収穫作業体系が確立しておらず、多大な労力の投入が必要であるため、収穫作業が作付面積拡大の障壁でした。これらの問題を解決するため、収穫機を開発しました。
開発した収穫機は、振動サブソイラーとポテトディガーを連結したものです。振動サブソイラーは、カンゾウの根茎を切断するとともに、土壌を破砕し、ポテトディガーは根茎を掘り上げるとともに、根茎と土砂を分離する役割を担います。振動サブソイラーとポテトディガーの連結に当たっては、リンク機構およびマストを装備し、掘り取り角度を可変とし、牽引抵抗および作業負荷を低減しました。また、ポテトディガーの掘り取り深さは約10cmであったので、掘り取り部の鋤刃を改良し40cm以上の掘り取り深さを実現しました。さらに、ポテトディガーのコンベアチェーンを長くし、土砂分離性能を改善しました。
本収穫機の利用により、掘り取り作業が一人で可能となり、掘り上げおよび土砂分離作業を連続で行うことができるため、作業面積は、従来1時間当たり1aでしたが、6aとなり、約6倍に効率化されました。なお、本件は特許を取得しており、また、収穫機は市販される予定です。

受賞者写真
技能部門受賞者 : 國岡 浩由 氏