研究活動報告

令和7年北農賞を受賞

情報公開日:2025年12月17日 (水曜日)

公益財団法人北農会主催の令和7年安孫子賞・北農賞贈呈式が、2025年12月16日(火)に札幌市内のホテルで開催され、農研機構は品種部門、報文部門、技能部門で栄えある北農賞を受賞しました。

品種部門

受賞業績名

ナタネ「ペノカのしずく」

受賞者名

農研機構北海道農業研究センター 大塚 しおり、石黒 浩二、根本 英子、原 尚資

業績の概要

  道央の水田輪作地帯では、ナタネは既存の作業機が使用でき、省力的に栽培できる輪作作物として重要である。これまでの主力品種「キザキノナタネ」は人に有害なエルシン酸含量が低く、家畜に有害なグルコシノレート含量が高いシングルロー品種である。輸入飼料価格が高騰するなか、タンパク質含量の高い搾油粕が飼料として利用できる寒地向けダブルローナタネ品種の育成が求められていた。
 そこで受賞者らは寒地向けダブルローナタネ「ペノカのしずく」を育成した。越冬性や耐病性、収量性、油分品質は「キザキノナタネ」と同程度であり、油糧作物として優れた特性を有し、搾油粕を家畜の濃厚飼料として利用できる。
  本成果はカロリーベース食料自給率が4%程度の国産油糧作物の振興とともに、飼料自給率の向上にも寄与することが期待される。

受賞者写真
品種部門受賞者:左から大塚 しおり、石黒 浩二、根本 英子(欠席:原 尚資)

報文部門

受賞業績名

バレイショ生産の省力化が可能となる防除畦の改良

受賞者名

農研機構北海道農業研究センター 朱里 勇治、辻 博之

業績の概要

 加工・成果用バレイショの栽培においては、収穫作業が労働時間の約5割を占める。これは収穫機上で礫や土塊などの夾雑物、腐敗塊茎や病害塊茎の選別・除去作業が必要なためであり、夾雑物混入の削減による省力化は重要な課題である。
 一方防除作業においては、防除機が畦をまたいで作業しており、 走行時の踏圧が土塊の発生要因になると考えられる。そこで受賞者らは土塊が発生しやすい場所として防除畦を想定し、防除畦の改良が土塊発生量、夾雑物発生量、収量、収穫作業速度、作業体系と投下労働時間に及ぼす影響を検討した。
 防除畦の一部にバレイショを植えずに防除機やトラクタが通る防除通路とすることにより、土塊発生量が減量する事を実証した。また、面積あたりの植え付け畦数が約8%減少し、周辺畦の補償作用により単位収量は慣行と同等であり、収穫作業が約10%削減できると試算された。
 本成果は、新規の機械装置を必要とせず、収量も慣行と同等で、労働時間が削減でき、種イモの使用量を減らせることを示した。生産現場への実装性が高く、小麦播種前作業との競合回避、バレイショ生産面積維持・回復への貢献など、北海道農業への寄与が大きい。

受賞者写真
報文部門受賞者:朱里 勇治(欠席:辻 博之)

技能部門

受賞業績名

ソバ脱穀作業用動力粗選別機の考案

受賞者名

農研機構北海道技術支援センター 髙倉 朋宏

業績の概要

 ソバの脱穀作業には数段階の作業工程があり、精選前の粗選別工程では、篩を用いて手作業により茎と種子を分別している。短期間に効率的に処理することが求められ、かがんだ姿勢で篩を左右に振り続ける必要があるため、肩、腰、膝に大きな負担がかかる。
 そこで受賞者は動力部分と篩部分からなる粗選別機を作成した。動力部分は電動モーターとプーリー、ベルトを利用し、篩部分は基本枠を鋼材により製作し、篩を載せる枠の車輪にベアリングを用いた。レールに篩を振動させる山を作ることによって、篩に振動を与えるとともに、枠の飛び出しの防止措置も施工した。また、篩を通過したサンプルが粗選別機の底部に設置した収集箱に収集され、容易に取り出せる構造とした。
 本選別機の操作は、篩にサンプルを投入して電源を入れ、サンプルを時折攪拌するのみであり、約30秒程度で篩い分けが完了する。手作業では1サンプルあたり約3分であったが、粗選別機では約1分半と半分程度に短縮された。さらに、作業姿勢が改善され、肉体的負担が大きく軽減した。
 本成果は粗選別作業の効率化・軽労化を実現し、ソバ育種研究の進展に貢献している。

受賞者写真
技能部門受賞者 : 高倉 朋宏