農産物の消費者ニーズ把握のための消費者行動データ収集・分析方法
要約
研究機関等による地域特産農産物を用いた食品開発において消費者ニーズを把握する際には、開発の段階に即して家庭での食行動記録調査や個別面接調査、会場テスト、店舗での視点計測等を組み合わせて実施する。
- キーワード:食品開発、消費者ニーズ、消費者行動データ
- 担当:食農ビジネス推進センター・食農ビジネス研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7599
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
研究機関等が地域特産農産物を用いて食品開発を行う際には、各段階での消費者ニーズの把握が不可欠である。しかし食品、特に農産物は規格や品質が多様で様々な調理方法があるなど、独自の特性を有している。一方、消費者のライフスタイルや意識も多様化し、これらが複雑に影響しあってニーズが形成されている。そのため消費者ニーズを的確に捉えるには、様々なデータ・分析手法を組み合わせ、開発の段階に即して調査・分析を行う必要がある。そこで、農産物等食品の消費特性や消費者ニーズを多角的・体系的に把握するための消費者行動データの収集・分析方法を策定する。
成果の内容・特徴
- 地域特産農産物を用いた食品開発プロセスは図のように整理できる。一般的な開発場面で従来から実施されてきたグループインタビューやアンケート調査に基づく各種多変量解析に加えて、プロセスの各段階において、様々なデータの収集・分析方法を組み合わせて実施する(図、表)。
- 「I.ニーズの探索・検討」段階では、統計個票等の分析により長期的な消費動向を、共分散構造分析により消費者行動に影響を与える要因の相互関係を確認する。また、食行動記録調査により家庭での使用方法(使用場面、調理方法、他の食品との組み合わせ、保存の方法と期間等)を把握するとともに、そこでの問題点・要望を個別面接調査やグループインタビューにより詳細に把握する。これらから得られた消費者ニーズを、アンケート調査及びその解析により検証する。
- 「II.研究の実施」段階では、設計・試作した開発食品に対する評価を得る。コンジョイント分析では、仮想的に各種属性(品種、栽培方法、機能性等)を提示することで、これらに対する消費者の受容性を把握できる。試作品等がある場合は、会場テストにより食味やパッケージ、価格等への評価を把握するとともに、調理の素材として用いるものについてはホームユーステストや食行動記録調査、個別面接調査により実際の使用場面での評価を得る。
- 商品化後の「III.商品評価の把握・検討」段階では、アンケート調査及びその解析の他、店舗内での視点と発話の同時計測により対象食品及び表示への消費者の反応を確認する。また、直売所等でPOSデータが取得できる場合は、出荷者別のリピーター獲得状況や品質との関係、売り逃し分や売り上げ予測などを分析し、改良に利用する。
成果の活用面・留意点
- 研究機関等において高付加価値農産物・食品の開発を進める際に活用できる。
- 一般的な商品開発におけるニーズ把握手法に、農研機構において開発したデータ収集・分析方法及びこれまでに適用した手法を加えて体系化したものである。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(科研費、農食事業)
- 研究期間:2011~2017年度
- 研究担当者:山本淳子、河野恵伸、磯島昭代、田口光弘、吉田晋一、佐藤百合香、梅本雅、大浦裕二(東京農大)、八木浩平(政策研)、小野史(経営大学校)
- 発表論文等:
1)山本ら(2016)アグロフードマーケティングTOOL第2集:2-37
2)山本ら(2016)フードシステム研究、23(3):169-174