ダイズ品種「里のほほえみ」における不定形裂皮粒の発生量と開花時期の関係

要約

「里のほほえみ」の裂皮粒は不定形裂皮粒と線形裂皮粒に大別され、不定形裂皮粒が主要部分を占める。不定形裂皮粒の発生量と開花時期の間には高い負の相関が認められ、開花時期は「里のほほえみ」の不定形裂皮粒の発生量を推測する指標となる。

  • キーワード:ダイズ、里のほほえみ、種子、裂皮、開花時期
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸作物栽培グループ
  • 代表連絡先:電話025-526-3210
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北陸地域のダイズ生産においては、新品種「里のほほえみ」への品種転換が急速に進んでいる。同品種では、検査規格上で被害粒として取り扱われる皮切れ粒(裂皮粒)が、生産年によっては多発することから、その発生防止が北陸産ダイズの品質向上にとって重要な課題である。播種時期を遅くすることにより裂皮粒の発生量が減少することが、これまでに「里のほほえみ」をはじめとする多くのダイズ品種について知られているが、その作用機作については明らかにされていない。そこで、晩播を軸とした栽培管理による「里のほほえみ」の裂皮粒発生防止技術の確立に向け、晩播により同品種の裂皮粒の発生が減少する機作を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「里のほほえみ」の種子に生じる裂皮は、種皮が種子の短軸方向に引きちぎられたような形状の不定形裂皮と長軸方向に対して垂直に裁ち切られたような線形裂皮の2種に大別され(図1)、不定形裂皮粒が裂皮粒の主要部分を占める(表1)。
  • 不定形裂皮粒、線形裂皮粒ともに、5月下旬の標準播に比べ、6月中旬の晩播で発生量は有意に減少し、特に不定形裂皮粒の減少が著しい(表1)。
  • 不定形裂皮粒の発生量と、開花始期(群落に最初の開花を認めた日)、登熟期(開花始期~莢成熟期)の日数、登熟期の積算気温との間には有意な高い相関が認められるが、百粒重との間には有意な相関は認められない(表2)。
  • 3年間の栽培条件が様々に異なる栽培試験について、不定形裂皮粒の発生量は開花時期によりうまく説明される(図2)ことから、栽植密度、施肥量、登熟期の土壌水分や平均気温等の栽培環境が「里のほほえみ」の不定形裂皮の発生に及ぼす影響は小さく、開花時期は不定形裂皮粒の発生量の多少を推測する指標として有効である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 「里のほほえみ」の栽培において、不定形裂皮粒の発生を低減可能な播種時期の決定に活用する。
  • 本研究のデータは、新潟県上越市にて実施した「里のほほえみ」の栽培試験により得られたものである。その他の地域で栽培される「里のほほえみ」の不定形裂皮粒の発生量と開花時期の関係については、さらに検討を要する。
  • 本研究での裂皮粒の判定基準は、農林水産省の検査規格に準拠したものではない。
  • 開花始期、登熟日数、登熟期の積算気温は相関関係にあり、これら3要因のうち、いずれが不定形裂皮の発生の主要因であるかは、さらに検討を要する。

具体的データ

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2014~2016年度
  • 研究担当者:中山則和、細野達夫、大野智史
  • 発表論文等:中山ら(2018)日作紀、87(2):183-191