簡易型GNSS記録装置を用いた水管理などの作業・移動経路調査システム

要約

位置ロガー(簡易型GNSS記録装置)を利用して取得した移動軌跡データを測定し、判別モジュールにより移動状態を判別することで、取水口の操作、圃場間の移動経路や時間を分離でき、新技術や集約化による省力化の効果を示すことができる。

  • キーワード:簡易型GNSS記録装置、稲作水管理、移動軌跡、給水栓操作、圃場間移動
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸土壌管理グループ
  • 代表連絡先:電話025-526-3210
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

情報通信技術(ICT)を活用した水管理作業の省力化を推進するための機器が開発されつつある。位置情報を記録・表示できるソフトウェアは普及しているが、簡便かつ安価に、水管理による取水操作や圃場間の移動を詳細に分析した研究やソフトウェア開発はほとんどなく、新技術の導入効果を検証する手法を確立する必要がある。そこで、簡易型GNSS記録装置(以下、「位置ロガー」)で得られる稲作水管理用の車両の移動軌跡から、取水口操作、圃場間の移動時間や移動経路を分離し、水管理の詳細を分析する手法を示す。

成果の内容・特徴

  • 稲作水管理を行う車両に位置ロガーを装着することで電源供給が可能になり長期間データ収集できる。位置データは5秒間隔で収集すれば判別モジュール(図1)で移動状態の判別し、移動軌跡と車両停止位置の情報を得ることができる。これらにより、移動速度、水管理を行う圃場の給水栓位置から水管理の移動と給水栓操作を分離することができる(図2)。
  • 位置ロガーから得られた停止位置と圃場の給水栓位置は一致する(図2)。ビデオ撮影による作業分析(図3の「実測」)と、位置ロガーを用いて判別した移動と給水栓操作の分析結果はほとんど一致し(図3)、集計した誤差もわずか(3.3ポイント)であることから、作業・移動経路調査に利用できる。
  • 位置ロガーを農業経営体の水管理分析に用いることができる。測定・解析例として、情報通信技術を用いた給水機(ICT型給水機)を導入した場合の給水栓操作時間(図4左の「調査区」)と、慣行の手動給水栓の操作時間(同、「対照区」)の比較(図4左)や、異なる経営体の作業圃場面積あたりの集落間移動を比較することができる(図4右)。

成果の活用面・留意点

  • 水管理に関する農業農村整備事業実施前後の省力効果の定量評価、複数の給水栓タイプや地形条件が異なる地区の比較などに用いることができる。
  • 位置ロガーは、正しい経路を追うために5秒間隔以上であれば使用可能である。水稲作1作期などの長期間収集する必要がなければ車両以外でも利用が可能である。
  • 給水機の導入例や異なる経営の移動距離の違いによる比較例は、福井県内の大規模農業経営体の分析結果を示している。

具体的データ

図1 移動判別モジュール;図2 収集された移動軌跡;図3 水管理作業分析結果;図4 位置ロガーの現地への測定・解析例(左:給水時間調査、右:移動時間調査)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:坂田賢、関正裕、建石邦夫、加藤仁
  • 発表論文等:
  • 1)坂田ら(2017)農業農村工学会論文集、305:I_177-I_183
    2)坂田ら(2017)農業農村工学会誌、85(6):23-26
    3)坂田ら(2018)農業農村工学会誌、86(3):19-22