2025年の地域農業の姿が把握できる「地域農業情報システム」

要約

離農に伴う供給農地面積、担い手経営体数、農地維持のために期待される担い手経営の経営面積等の2025年の予測値が、市町村単位でWeb上から取得できるシステムである。地域農業の将来ビジョンや担い手経営の経営モデル・支援施策の策定等に活用できる。

  • キーワード:農林業センサス、地域農業、将来ビジョン、担い手経営、経営面積
  • 担当:中央農業研究センター・農業経営研究領域・経営計画グループ
  • 代表連絡先:電話029-838-8874
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農業労働力の高齢化率や耕作放棄地率の上昇、米価下落等、農業生産基盤の脆弱化と担い手経営の環境悪化が進行する今日、農政担当者には、農地資源をフルに活用しつつ収益力の高い担い手経営の育成を核とした地域農業の将来ビジョンの策定が求められている。そのためにはまず、地域農業構造の現状と将来動向を詳細・的確に把握する必要がある。
そこで「2015年農林業センサス」(個票)の組替集計により、公表値では把握できない担い手経営の特徴等を示すとともに、農業就業人口や離農に伴う供給農地面積、担い手経営体数、担い手経営に期待される経営面積を2025年まで予測し、結果を公開する。

成果の内容・特徴

  • 「地域農業情報システム」は、地域農業の特徴や将来動向を把握することで、「人・農地プラン(地域農業マスタープラン)」の改善等、地域農業の将来ビジョン策定に向けた合意形成等に活用することができる情報である(図1)。Web上で都道府県および市町村(2015年2月1日現在)を選択することで、該当地域の情報をPDFでダウンロードできる。
  • 地域農業の現状・特徴を、a)担い手経営の営農類型と農地集積の動向(図2)、b)担い手・非担い手別の経営体数、農地面積、保有労働力、c)作物別・地目別の面積、耕作放棄地面積(率)、等の観点から把握できる。
  • 地域農業の将来動向を、a)年齢階層別農業就業人口、b)離農に伴う供給農地面積(累計)(図3)、c)担い手経営体数、d)農地面積を維持するために期待される担い手経営の経営面積(図4)、e)担い手経営への農地集積率、の観点から2025年まで把握できる。
  • 「2010年農林業センサス」データに基づく『「人・農地プラン(地域農業マスタープラン)」策定等に活用できる地域農業情報システム』(2012年公表)と比べ、a)2015年調査のデータに基づいている点、b)各種予測値を5年延長し2025年まで示している点、c)担い手経営体数と担い手経営に期待される経営面積の予測値を示している点、が特徴である。

成果の活用面・留意点

  • 農政担当者にとって「人・農地プラン(地域農業マスタープラン)」の改善等に向けた合意形成の促進や支援すべき担い手経営の具体化・モデル化、支援施策の策定に活用できる。
  • 農研機構マネジメント技術のWebサイトから利用できる(2018年3月公表予定)。
  • 担い手経営は、「経営面積5ha以上(北海道は15ha以上)の家族経営体」および「法人組織経営体」と定義している。なお、a)両者とも基幹部門(稲作、園芸作等)は問わない、b)法人組織経営体の経営面積は問わない。
  • 担い手経営に期待される経営面積は、離農に伴う供給農地を担い手経営が全て引き受けると仮定した場合に要請される、担い手1経営体当たりの平均的な値である。一方、営農現場では担い手経営の経営面積は一律ではない。このため担い手経営の目標経営面積の設定に際しては、担い手経営に期待される経営面積の拡大倍率(予測値/2015年値)を基に担い手経営ごとに検討・設定することが有効である。

具体的データ

図1 「地域農業情報システム」の利用方法;図2 担い手経営の農地集積の動向
(営農類型別)(筑西市の例);図3 家族経営体数と離農に伴う供給農地面積(累計)(筑西市の例);図4 担い手経営に期待される経営面積(筑西市の例)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:安武正史、松本浩一、渡部博明、千田雅之
  • 発表論文等:安武(2018)関東東海北陸農業経営研究、108:53-57