関東の稲・麦・大豆の水田作経営がオペレータ1人で耕作できる面積の到達点

要約

現状の土地条件と技術体系を前提とした場合、関東の平坦水田地帯における稲・麦・大豆作経営がオペレータ1人で耕作できる上限面積は39haである。この面積を上昇させるには、特に大豆のは種、小麦の収穫、乾田直播水稲のは種の省力化が効果的である。

  • キーワード:水田作経営、技術開発、線形計画法、オペレータ1人、耕作可能面積
  • 担当:中央農業研究センター・農業経営研究領域・経営計画グループ
  • 代表連絡先:電話029-838-8874
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

茨城県や千葉県における稲・麦・大豆を中心とする水田作経営では、離農の進展に伴って経営面積が急速に拡大している。中央農業研究センターが実施したニーズ調査によれば、そのような背景の下で地域農業を維持するには、オペレータ1人で耕作できる面積(以下、「OP1人耕作可能面積」)を大きく拡大する技術が求められている。これに応えるには、現在多くみられるほ場が30a~1ha区画で一定程度に分散されている土地条件と、稲・麦・大豆の水田輪作に係る技術体系の下で、「OP1人耕作可能面積」の上限面積を確認した上で、その面積拡大を阻害している要因を明らかにする必要がある。
そこで、以下の特徴を持つ線形計画法による水田作経営モデルのシミュレーション(以下S)から、現状の土地条件と技術体系の下での「OP1人耕作可能面積」の到達点を明らかにする。分析に用いる水田作経営モデルの主な特徴は、一定程度に分散された比較的に排水良好な30a~1ha区画の水田において、トラクタやコンバイン等主要機械(2セット体系)を操作するオペレータ2人と補助者1人で、水稲、小麦、大豆等の作期拡大が可能な品種、作型、栽培法等を組み合わせて生産活動を行っている点である。

成果の内容・特徴

  • 現状の土地条件と技術体系における「OP1人耕作可能面積」は、「乾田直播水稲-移植水稲-小麦-大豆」の3年4作体系を前提とすると26.0haである。3年4作体系の前提を解除し、連作や畑輪作を許容すると35.5haへ上昇する(図1)。
  • 畑作物の連作障害を避ける緑肥的な位置づけで子実トウモロコシの導入を図ると、「OP1人耕作可能面積」は38.9haまで上昇する(図1)。
  • 「OP1人耕作可能面積」の上限が38.9haとなる原因は、主に3月下旬から6月中旬と9月上旬から12月中旬においてオペレータの作業時間が上限(オペレータ1人当たり80時間)に達するためである(図2)。
  • 作業時間が上限に達している旬においてオペレータが作業できる時間を増加(オペレータ1人当たり10時間増加)させた場合、大豆のは種時期である7月中旬が最も増加面積が大きい。また、小麦収穫時期の6月上中旬や乾田直播水稲のは種時期の3月下旬から4月中旬での増加面積が比較的に大きい(図3)。そのため、それらの作業の省力化が「OP1人耕作可能面積」の上昇に効果的である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、水田作経営における「OP1人耕作可能面積」の上昇を図る研究開発に向けて技術開発要素を検討する場合に活用できる。
  • 水稲・麦・大豆での水田輪作による土地利用が展開する関東の平坦地帯を想定した試算結果である。
  • 用いる品種、作型、栽培法等の組み合わせに応じて、試算される「OP1人耕作可能面積」も影響を受ける。

具体的データ

図1 「OP1人耕作可能面積」の推計結果;図2 「子実トウモロコシ導入」における主要作業の旬別作業時間;図3 「子実トウモロコシ導入」での作業時間増加による作付面積への影響

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2017年度
  • 研究担当者:松本浩一
  • 発表論文等:松本(2018)関東東海北陸農業経営研究、108:71-77