植物検疫対象のポスピウイロイド全8種の網羅的検出法
要約
ナス科・キク科植物を中心に被害を与える国内未発生種を含む8種のポスピウイロイドを網羅的に検出し、さらにウイロイド種の識別を可能とする新たな検査法である。本法により、種苗類からのポスピウイロイドの検出ができる。
- キーワード:ポスピウイロイド、リアルタイムPCR、種苗、トマト、ジャガイモ
- 担当:中央農業研究センター・病害研究領域・リスク解析グループ
- 代表連絡先:電話029-838-8885
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ポスピウイロイド属は、国内未発生種を含む9種のウイロイドからなる。そのうち8種は、主にトマトやジャガイモ等のナス科作物に感染し、甚大な経済的被害を引き起こす(表1)。また、種子伝染の他、多くの植物種で無病徴感染するため、植物検疫上これら8種全てについて、国内への侵入阻止のため種苗類の輸出入時の検査が必要とされている。しかし、既存の検出法では、ポスピウイロイド全種を検出することができず、また種の特定には塩基配列解析が必要なため時間とコストを要する。そこで、ポスピウイロイドを網羅的に検出し、さらに種の識別を可能とする新たな検査法を開発する。
成果の内容・特徴
- 本検出法はSYBR Green法とTaqManプローブ法の2種のリアルタイムPCRシステムを組み合わせたものである(図1)。
- SYBR Green法による1次検定では、1組のユニバーサルプライマーにより6種ウイロイドを、特異的プライマーによりユニバーサルプライマーでは検出できない2種を検出することで、8種のウイロイドを検出することができる(表2)。また得られる増幅産物は、解離曲線から偽陽性との識別が容易であり、その特異的解離温度からウイロイド種の推定が可能である(図2)。
- ウイロイド種の識別が必要な場合、2次検定としてTaqManプローブ法により、ウイロイド種を特定する(図1及び表2)。
成果の活用面・留意点
- 輸入時の種苗類のポスピウイロイド検査に用いることにより、国内未発生ウイロイドの侵入リスクの低減に貢献できる。
- 輸出先の検査要求に対応した種苗類の検査に用いることができる。
具体的データ
その他
- 予算区分:委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)、その他外部資金(レギュラトリーサイエンス)
- 研究期間:2011~2017年度
- 研究担当者:柳澤広宣、志岐悠介(植防)、松下陽介、大石盛伝(植防)、高上直樹(植防)、津田新哉
- 発表論文等:Yanagisawa H. et al. (2017) Eur. J. Plant Pathol. 149:11-23