水田におけるイネ縞葉枯病のまん延過程と発病イネにおける減収のしくみ

要約

水田内におけるイネ縞葉枯病のまん延は、水田に飛来するヒメトビウンカの第1世代成虫とその次世代成幼虫によって引き起こされる。イネ縞葉枯病による減収は、健全な穂の減少にともなう籾数の減少が主要因であり、発病時期が早いほど被害が大きい。

  • キーワード:イネ縞葉枯病、ヒメトビウンカ、被害解析、減収、イネ
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・虫害防除体系グループ
  • 代表連絡先:電話050-3533-1838
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

関東、近畿、九州地方において、ヒメトビウンカが媒介するイネ縞葉枯病の被害が増加しており、早急な対策技術の開発が求められている。イネ縞葉枯病の早期鎮静化のためには、本病のまん延や減収に影響を及ぼす要因を明らかにし、それに対する対策を講じる必要がある。そこで、多発地域における水田内のイネ縞葉枯病のまん延過程と本病による減収機構を明らかにし、本病を効果的に防除するための総合防除技術の高度化につなげる。

成果の内容・特徴

  • イネ縞葉枯病は、水田に飛来する第1世代成虫によるウイルス媒介によりまばらに発生が始まり、続いて発生する第2世代成幼虫によるウイルス媒介により初期感染株から周辺株に急激に広がる(図1)。幼穂形成後に発生する第3世代虫は感染株の増加に寄与しない。
  • 発病時期が早いほど被害が大きくなる(図2)。開花期以降は、新たに発病する株は少なくなり(図1)、発病しても被害は小さい(図2)。
  • イネ縞葉枯病を発病した穂は稔実しない。そのため、イネ縞葉枯病による減収は、健全な穂の減少にともなう籾数の減少が主要因となる(図3)。
  • イネ縞葉枯病による被害を軽減するためには、水田に飛来する第1世代成虫の防除を徹底して発病ならびに次世代虫の発生を抑制するとともに、必要に応じて第2世代虫の防除を実施して、健全な穂をより多く確保することが重要である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はイネ縞葉枯病の防除指導や発生予察を行う病害虫防除所、普及指導センター、試験研究機関等で活用できる。
  • 本成果は茨城県のイネ縞葉枯病多発地域におけるコシヒカリ水田で実施した調査結果に基づく。

具体的データ

図1 水田におけるイネ縞葉枯病のまん延過程.73株×30列の調査区内の結果;図2 発病時期と収量の関係.異なる英文字間で有意差有り;図3 イネ縞葉枯病発病株における健全穂数と収量の関係;

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2011~2017年度
  • 研究担当者:柴卓也、平江雅宏、早野由里子、大藤泰雄、上松寛、杉山恵乃(茨城農総セ農研)、奥田充
  • 発表論文等:Shiba T. et al. (2018) Field Crop. Res. 217:211-217
  • DOI:10.1016/j.fcr.2017.12.002