木質バイオマスを燃料とする貯湯式のハウス暖房システム

要約

木質バイオマスを燃料として燃焼熱を温水に変換して貯湯し、ラジエーター式放熱器で放熱してハウスを温風暖房するシステムである。貯湯式であるため出力調整が容易であるとともに、小型バーナーで複数棟のハウスを同時に暖房し効率を上げられる。

  • キーワード:施設園芸、ハウス暖房、化石燃料代替、木質バイオマス、バイオマスボイラー、ラジエーター式放熱器
  • 担当:中央農業研究センター・生産体系研究領域・バイオマス利用グループ
  • 代表連絡先:電話029-838-7157
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

わが国の施設園芸は化石燃料に大きく依存しており、原油価格の高騰は生産者の経営の圧迫や冬季の野菜価格上昇の一因となっている。一方、地域資源である木質バイオマスの利活用の取り組みが各地に広まっている。そこで、施設園芸でのハウス暖房に使用される化石燃料を木質バイオマスで代替することを目的に、バイオマスボイラーにより燃焼熱を温水に変換して貯湯し、放熱器で放熱して温風暖房するハウス暖房システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システム全体の概略図を図1に示す。本システムは、燃料定量供給機、バケットコンベア、ロータリーキルン式バーナー、温水熱交換器、サイクロン集塵機、温水タンクからなるバイオマスボイラー一式(図2左)と、ハウス内に設置するラジエーター式放熱器(図2右)で構成される。
  • 定量供給機で燃料をバーナーに供給し、バーナーで燃料をガス化燃焼させ、バーナーから吹き出す熱風で熱交換器内の水を温める。温まった温水を熱交換器と温水タンクとの間で循環させ、温水タンクに貯湯する。貯湯した温水をハウス内に設置した放熱器との間で循環させ、ダクトファンで送風することで温水から温風に熱交換してハウス内の暖房を行う仕組みである。日中に温水を貯湯し、気温の下がる夜間に暖房を行うことを基本とする。
  • 放熱器の暖房能力は水温60~80°Cで25kW程度である(図3)。放熱器のダクトファンのON/OFF制御により、ハウス内気温は制御用センサー位置で±1°C程度に制御できる(図4)。放熱器は自動車用ラジエーター部品を流用しており、従来品の半額以下と安価である。
  • 本システムは貯湯式であるため、温水の供給量で暖房負荷に応じた出力調整ができるとともに、ボイラー一式に対して放熱器の台数を増やすことで、小型のバーナーで複数棟のハウスを同時に暖房し、効率を上げられる。

成果の活用面・留意点

  • 木質バイオマスで化石燃料を100%代替しようとすると、余った熱量が無駄になるため、既設の化石燃料暖房機をバックアップとして使用する。既設の暖房機がない場合は、灯油ボイラー等をバックアップとして併設する必要がある。
  • 燃料となる木質チップは前処理が必要である。切削チップは厚みのあるものや節が定量供給機のスクリューに挟まり供給不能になる恐れがあるため、25mm角目篩で選別する。ピンチップは一部に100mm程度の長さのものがあるため、ハンマーミル等の破砕機で下網径30mmで粗砕することで定量供給可能になる。
  • 現在、現地において暖房試験を行っており、試験結果を受けて制御面でのシステム改良を行った後、普及を図る予定である。
  • システムを構成する各機器は、製造販売するメーカーより購入できる。

具体的データ

図1 システム全体の概略図;図2 バイオマスボイラー一式(左)およびラジエーター式放熱器(右);図3 ラジエーター式放熱器の暖房能力;図4 ハウス暖房試験結果の一例

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(再エネ)、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2013~2017年度
  • 研究担当者:竹倉憲弘、山下善道、金井源太、薬師堂謙一、安東赫
  • 発表論文等:竹倉ら(2018)農業施設、49(1):24-30