農地集約化に向けた人・農地プランの策定・改定のためのPDCAサイクル

要約

担い手への農地集約化に向けた「人・農地プラン」の策定では、1)推進チーム体制の構築と担い手の組織化、2)プラン作りに向けた支援活動項目と行程管理表の作成、3)プラン策定後のチェックシートでの進行管理によるPDCAサイクル実施が有効である。

  • キーワード:人・農地プラン、農地集約化、推進チーム、PDCAサイクル、進行管理
  • 担当:中央農業研究センター・農業経営研究領域・営農システム評価グループ
  • 代表連絡先:電話0298-838-8874
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農政は農地中間管理機構(以下、管理機構)と「人・農地プラン」(以下、プラン)」を用いた担い手への農地集約化の取り組みを進めている。だが、近年、集積率の伸びは停滞傾向にありプラン作成の一層の推進や作成後の改定が重要な課題である。そこでPDCAサイクルに基づき、効果的なプランの作成と改定が行える現場関係者(行政・JA・中間管理機構等の職員、農地利用最適化推進委員等)向けの手順や留意点を提示する。

成果の内容・特徴

  • プランの策定・改定に向けたPDCAサイクル(図1)の実施に先だって、農地集約化に関わる関係者の洗い出しと推進チーム(以下、チーム)体制の構築が必要である。チームは、地域リーダー(農地利用最適化推進委員等)と外部リーダー(市町村、JA、管理機構の職員等)が役職やスキルに応じた専門家リーダーとして参画する体制とする。あわせて、チームは、担い手間の関係性構築と担い手間の農地交換を通じた農地集約化の場となる担い手の組織化を図る。チームは、担い手間の営農情報の共有、借地料の調整、農地交換による集約化のシミュレーション等を通じて農地集約化に取り組む。
  • プラン策定の過程(プラン作り)では、チームによる具体的な支援活動項目の抽出・整理が求められる。そこで「戦略マップ」の理論を援用した4つの視点から支援活動項目を検討・策定する(表1)。まず、プラン作りを通じて地域農業改革に取り組む目的(担い手集積率80%等)を設定する(活性化の視点)。次に、目的達成に向けて必要な地権者や担い手等の関係者の意向を把握するための項目を検討する(関係者の視点)。そして、担い手への農地集約化に向けた地域の「総意」作りのための活動方向を検討する(方向性の視点)。最後に、担い手への農地集約化の効果発揮に向けた仕組み作りを検討する(プロセスの視点)。また、こうした支援活動項目と同期した月別工程管理表(表2)を別途作成することで、プラン実行に向けた効率的な推進を図る。
  • プラン策定後は、その実行状況を踏まえて、毎年の評価とプランの見直しを行い、改定案を提示する進行管理が必要である。その際、進行管理チェックシート(図2)を用いれば定期的・効率的な軌道修正が可能となる。チームは、このシートを用いて、地域、地権者等、担い手について、年度当初に「評価項目」と「目標」を設定する。年度末にチーム各担当者は、目標と実績に違いが生じた理由を踏まえ改善点を提案する。提案内容は、推進チームだけでなく、担い手や農地の出し手も含めて評価し、次年度に重点的に取り組む課題の優先順位を決定する。必要に応じてプランを改定する。

成果の活用面・留意点

  • これらの手順はhttps://fmrp.dc.affrc.go.jp/から「農地集約化支援ガイドブック」としてダウンロードできる。

具体的データ

図1 人・農地プランに策定に関わるPDCAサイクル,表1 人・農地プラン作りに向けた支援活動項目の整理表(例),表2 プラン実行に向けた工程管理表,図2 人・農地プラン策定後の進行管理チェックシート(例)

その他