青枯病抵抗性台木は発病株からの青枯病菌の土壌への移動を減らす

要約

青枯病抵抗性品種を台木として用いた接ぎ木トマトは、感受性品種の自根や台木に比べ、青枯病を発病した株から病原細菌が土壌へ移動する割合と移動量を減少させる。

  • キーワード:青枯病、トマト、抵抗性台木、接ぎ木、土壌汚染
  • 担当:中央農業研究センター・病害研究領域・病害防除体系グループ
  • 代表連絡先:電話029-838-8916
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

青枯病はトマト栽培において最も被害の大きい土壌伝染性の病害である。その病原細菌Ralstonia solanacearum は土壌の深層にも分布し、長期間にわたって生存する。また、管理作業で使用したハサミなどで接触伝染が起こり、青枯病発病株からは病原細菌が根を通って土壌に移動するため、病原細菌による汚染の状態を悪化させる。青枯病対策として、抵抗性品種を台木として用いる接ぎ木栽培が普及しており、土壌からの感染を抑制するが、本方法では接触伝染での発病拡大は抑えることはできない。しかし、抵抗性品種の台木は、発病した植物からの病原細菌の土壌への移動も抑制している可能性が考えられる。そこで、本研究では青枯病菌に感染した自根及び接ぎ木株の土壌への病原細菌の移動程度について検証する。

成果の内容・特徴

  • 感受性品種の自根株では、株全体の半分程度の葉が萎れた状態(発病度3、図1)になると、半数以上で青枯病菌が土壌へ移動する(図2)。また、全身萎凋(発病度4)まで進展すると約105個/g乾土程度の青枯病菌が土壌に移動する(図3)。
  • 強度抵抗性品種を台木として接ぎ木した株では、発病度3では土壌への移動は2割程度であり、発病度4で半数以上の株で移行が起こる(図2)。また、枯死株(発病度5)では約103個/g乾土程度の青枯病菌が土壌に移動する(図3)。
  • 感受性品種および中度抵抗性品種を台木とした接ぎ木株では青枯病菌が深さ30~60cmの深層にも高い割合で多量に移動するが、強度抵抗性台木品種を台木とした接ぎ木株では、その割合と菌数が減少する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 台木品種の抵抗性の程度により、土壌の病原細菌による汚染の軽減効果は異なる。
  • 強度抵抗性台木品種を用いた接ぎ木株でも青枯病菌は圃場の深層部まで移行することから、青枯病と判断したら直ちに茎を残さないように株元から抜き取る。

具体的データ

図1 トマト青枯病の発病度,図2 自根株と接ぎ木株における発病度と土壌からの青枯病菌検出割合の関係,図3 自根株と接ぎ木株における発病度と土壌へ移動した青枯病菌量の関係,表1 青枯病発病株から土壌への病原細菌の移動検出数と移動量

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
  • 研究期間:2013~2018年度
  • 研究担当者:井上康宏、中保一浩
  • 発表論文等:
    • Inoue Y. et al. (2018) J. Gen. Plant Pathol. 84:118-123
    • 井上、中保(2018)関東東山病害虫研報、65:16-18