ナス用台木Solanum torvumに対するネコブセンチュウ2種の寄生性の違い
要約
ナス接ぎ木栽培に台木として用いられるS. torvumは、サツマイモネコブセンチュウ抵抗性であり、サツマイモネコブセンチュウの密度を抑制する効果があるが、アレナリアネコブセンチュウ本州型には感受性である。
- キーワード:ナス、サツマイモネコブセンチュウ、アレナリアネコブセンチュウ本州型、台木
- 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・線虫害グループ
- 代表連絡先:電話029-838-8916
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
線虫の防除に作物の抵抗性を利用することは、殺線虫剤の使用量を削減しつつ被害を回避できる線虫管理技術の一つである。ナス栽培種であるSolanum melongenaには、ネコブセンチュウ抵抗性の品種・系統は見出されていないが、近縁種でナス用台木として利用されるS. torvumは、ネコブセンチュウ抵抗性であるといわれている。国内には複数種のネコブセンチュウが生息しており、特にサツマイモネコブセンチュウとアレナリアネコブセンチュウ本州型の2種が、東北地方から九州地方にかけて広く分布し農業上被害が大きい重要種である。しかしながら、それぞれの種に対するS. torvumの抵抗性は明らかになっていない。そこで、ネコブセンチュウ汚染土壌での線虫密度抑制効果や、サツマイモネコブセンチュウ及びアレナリアネコブセンチュウに対する抵抗性について調査する。
成果の内容・特徴
- サツマイモネコブセンチュウ汚染土壌栽培にてナス栽培種S. melongenaとS. torvumを比較すると、ナス栽培種S. melongenaは根こぶ症状が著しく、栽培後の線虫密度が大幅に上昇するのに対し、S. torvumは、根こぶ症状がほとんど観察されず、線虫密度も抑制される(図1、表1)。
- S. torvumは、サツマイモネコブセンチュウとアレナリアネコブセンチュウ沖縄型には抵抗性であるが、アレナリアネコブセンチュウ本州型には感受性である(表2)。
- 現在、国内ではS. torvumの台木用品種として「トルバム・ビガー」「トナシム」「トレロ」が市販されているが、3品種ともサツマイモネコブセンチュウには抵抗性、アレナリアネコブセンチュウ本州型には感受性である(表3)。
成果の活用面・留意点
- S. torvumを、アレナリアネコブセンチュウ本州型汚染圃で栽培した場合、アレナリアネコブセンチュウ本州型が増殖するため注意する。
- アレナリアネコブセンチュウ沖縄型は、主に沖縄県に分布し、分布範囲は狭い。各種線虫種はミトコンドリアDNAのPCR-RFLP法で識別可能である。PCR-RFLP法による識別については以下を参照されたい。
植原健人(2014)PCR-RFLP法(及び種特異的プライマー)による同定法. 線虫学実験. 京都大学学術出版会、pp60-65
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)、その他外部資金(SIP)
- 研究期間:2014~2018年度
- 研究担当者:植原健人、村田岳、上杉謙太、立石靖、岡田浩明、齊藤猛雄、中保一浩、門田康弘(理研CSRS)、谷口高大(群馬農技セ)
- 発表論文等:
- Uehara K. et al.(2016) Nematol. Res. 46:87-90
- Uehara K. et al.(2017) J. Phytopathol. 165:575-579