クビアカツヤカミキリのフェロモン成分を利用したトラップに雌雄成虫が誘引される
要約
モモやウメなどバラ科果樹の害虫であるクビアカツヤカミキリの雄成虫から放出されるフェロモン成分は光学活性な構造を持つ(6R,7S)-(E)-2-シス-6,7-エポキシノネナールであり、合成フェロモンは本種の雌雄成虫を誘引する。より安価に合成可能なラセミ混合物も雌雄成虫を誘引する。
- キーワード:クビアカツヤカミキリ、特定外来生物、バラ科果樹、フェロモン、モニタリングトラップ
- 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・情報化学物質グループ
- 代表連絡先:電話029-838-8939
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
クビアカツヤカミキリ(図1)は近年急速に日本各地に分布を拡大し、サクラをはじめモモやウメなどバラ科果樹に甚大な被害を与えることから、特定外来生物に指定されている。本種の生態は不明な点が多く、防除法はいまだ確立されておらず、本種の分布や発生などの情報は目視での確認に頼っている状況である。そこで本研究では、雄成虫が放出するフェロモン成分を同定し、合成フェロモンの野外における誘引性を検証し、モニタリングトラップとして利用可能とすることを目的とする。
成果の内容・特徴
- クビアカツヤカミキリの雄成虫から放出されるフェロモン成分は光学活性な構造を持つ(6R,7S)-(E)-2-シス-6,7-エポキシノネナール{(6R,7S)体}である(図2)。
- 被害園地において合成した物質を黒色のトラップに設置すると(図3)、フェロモン成分である(6R,7S)体を設置したトラップに最も多く捕獲されるが(図4A)、(6R,7S)体とその光学異性体(6S,7R)体の1:1混合物(ラセミ混合物)も同様に誘引効果を有する(図4B)。
成果の活用面・留意点
- 今後のモニタリング技術の開発に、光学活性な構造を持つ合成品よりも安価に合成可能なラセミ混合物の合成フェロモンが利用できる。
- 本種の合成フェロモンは雄成虫のみならず、雌成虫も誘引するので、被害を受ける作物周辺を避けてトラップを設置する等、設置場所に留意する必要がある。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化、科研費)
- 研究期間:2015~2018年度
- 研究担当者:安居拓恵、辻井直、安田哲也、深谷緑(日大)、桐山哲(日大)、中野昭雄(徳島農総技セ)、渡邉崇人(徳島大)、森謙治(東洋合成)
- 発表論文等: