糸を10cm~20cm間隔で上面に張ることでスズメの侵入頻度を減らすことができる

要約

内部に餌をおいた2m×1m×1mの直方体の試験枠を10羽のスズメを飼育している施設内に設置し、上面に糸を、50cm、40cm、30cm、20cm、10cm、5cm、2.5cm間隔で平行に張ると、間隔が狭まるほどスズメの侵入頻度は低くなるが、5cm、2.5cm間隔では枠内での平均滞在時間が長くなる。

  • キーワード:スズメ、糸、侵入阻害、鳥害、間隔
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・鳥獣害グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

スズメの農作物被害は水稲や麦など大規模圃場での被害が多く、防鳥ネットを張るなどの対策がコストや労力の面で取りにくい。カラスでは糸等を張ることによる侵入抑制技術が開発されており、スズメにおいても糸等を用いた侵入防止技術の開発が求められている。
そこで、本研究では密度や餌条件を一定に設定できる飼育下において、スズメの侵入を抑制できる糸の間隔を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 幅5m、長さ15m、高さ3mのトンネル型の飼育施設を用い(図1、2)、スズメ10羽を群れ飼育して行った試験である。幅2m、奥行き1m、高さ1mの直方体の試験枠の側面にスズメが通り抜けられない網目のネットを張り、試験中は試験枠内にのみ餌を設置してスズメの行動をビデオで記録する。糸の間隔1つにつき3回の試験を行い、3時間の試験を1日に1回行う。
  • スズメは糸を張らない場合と50cm間隔では侵入頻度は変わらないが、40cm、30cm、20cm、10cm、5cm、2.5cmと間隔を狭めていくと、侵入頻度は低くなり、20cm間隔では、糸を張らない場合の約1/10、10cm間隔では約1/15となる(図3)。
  • スズメは糸なしから50cm、40cm、30cm、20cm、10cm間隔までは平均滞在時間は変わらないが、5cm、2.5cm となると滞在時間がそれまでの3倍以上に長くなる(図4)。
  • 糸の間隔10cm~20cmが、侵入頻度が低く抑えられ、滞在時間も長くならないため、スズメの被害を防止するには適した間隔である。

成果の活用面・留意点

  • 糸を張る間隔を狭めるほど、スズメの侵入頻度は下がるが、間隔を5cm、2.5cmまで狭めると平均滞在時間が長くなり、被害が増加する恐れがある。
  • この試験は飼育室での試験であり、野外や大圃場でスズメに同様の侵入阻害効果があるかを明らかにするためにはさらなる試験が必要である。
  • 中央農業研究センター動物実験委員会において承認を受けている[承認番号:H24-3]。

具体的データ

図1 スズメ試験施設の模式図,図2 スズメ試験施設内の様子 図1の作業スペース側から奥に向かって撮影。写真中央が試験枠。,図3 糸の設置間隔とスズメの侵入頻度の関係,図4 糸の設置間隔とスズメの平均滞在時間の関係

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013-2019年度
  • 研究担当者:山口恭弘
  • 発表論文等:山口(2020)Animal Behaviour and Management. 56 (4) :105-111