良食味水稲品種「つきあかり」・「にじのきらめき」の多収栽培技術

要約

良食味水稲品種「つきあかり」・「にじのきらめき」の生育目標、栽培管理方法を提示することで、多収と整粒割合70%以上の優れた玄米外観品質を得ることが可能となる。また、両品種の食味や業務用炊飯米としての適性評価などに関する情報を生産者、普及指導者、実需者向けに提供する。

  • キーワード:イネ、業務用炊飯適性、栽培暦、栽培マニュアル、多収
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸作物栽培グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年わが国では人々の生活様式に変化がみられ,外食や中食向けの業務用米の需要は増加傾向にある。業務用米に求められる大きな特徴は,良食味でありながら比較的低価格で取引されることで多収は必須条件である。そこで良食味の水稲新品種「つきあかり」・「にじのきらめき」に関して650kg/10a程度の多収を得ることができる栽培技術を確立し、その内容を栽培マニュアルや栽培暦として、生産者から実需者まで幅広い利用者に提示する。

成果の内容・特徴

  • 中央農業研究センター北陸研究拠点(新潟県上越市)や北陸地域の生産者圃場で実施された栽培試験に基づいて、「つきあかり」栽培マニュアルでは630-660kg/10a、「にじのきらめき」栽培暦では650kg/10aを目標収量に設定している。両品種とも整粒割合は70%以上を目標とする(図1、図2)。
  • 北陸での地域基幹品種である「コシヒカリ」の栽培方法とは大きく異なることを、生育特性データや栽培暦に明確かつ簡潔に記している。一例として目標収量達成のためには「つきあかり」では9-12kg/10a、「にじのきらめき」では11-13kg/10aの総窒素施肥量が必要である (図1、図2)。
  • 目標収量に対しての収量構成要素の目安など、多収達成のためのポイントを明示している(図1、図2)。
  • 玄米品質維持のための収穫適期は「つきあかり」では出穂後積算気温で1000-1100°C(出穂後40日程度)、「にじのきらめき」では1100-1200°Cである(出穂後45日程度)(データ省略)。
  • 「つきあかり」栽培マニュアルでは早生であることを利用した中生品種「コシヒカリ」との作業分散、「にじのきらめき」栽培暦では耐倒伏性や高温登熟耐性など、両品種の多収性や良食味以外の長所を平易な表現でアピールするとともに、病害虫防除など注意点も説明している(図2)。
  • 両品種の優れた業務用炊飯米としての適性評価や食味に関する情報を、北陸での地域基幹品種である「コシヒカリ」などと比較して図示している(図3)。
  • 「つきあかり」栽培マニュアルと「にじのきらめき」栽培暦は中央農業研究センターのホームページで公開しており、無料でダウンロードできる(URLは発表論文等、を参照)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:実需者、生産者、普及指導者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:
    普及予定地域は寒冷地南部。令和2年12月9日時点で、「つきあかり」栽培マニュアルは7728部、「にじのきらめき」栽培暦は3849部ダウンロードされている。
  • その他:
    本マニュアルは、寒冷地南部向けの多収栽培手引きとして作成したものであり、その内容はSOPにも掲載されている。また寒冷地南部以外の地域に適用する場合は地域の土壌や気候に応じた技術の適正化が必要である。

具体的データ

図1 「つきあかり」の総窒素施用量と収量および玄米外観品質との関係(左)と目標収量達成のための収量構成要素の目安(右).,図2 「にじのきらめき」栽培暦(上)と耐倒伏性(左下)および高温年産の玄米外観の違い(右下).,図3 「つきあかり」の業務用炊飯米としての適性評価(左)と「にじのきらめき」の食味試験結果(右).

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2013~2019年度
  • 研究担当者:
    石丸努、大平陽一、大角壮弘、吉永悟志、古畑昌巳、岡村昌樹、長岡一朗、前田英郎、笹原英樹、松下景、梶亮太、鈴木啓太郎
  • 発表論文等: