果樹園のカラス対策「くぐれんテグス君」の簡易型「くぐれんテグスちゃん」

要約

果樹園のカラス対策「くぐれんテグス君」で側面部に使用していた防鳥網の代わりに、0.5m間隔と止まり避けの合計5本のテグスを張る「くぐれんテグスちゃん」は、脚立作業なしで安全に設置でき、カラス侵入を抑制する効果と資材費はほぼ同等であり、設置作業時間は2割削減される。

  • キーワード:カラス、果樹、被害対策、くぐれんテグス君、くぐれんテグスちゃん
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・鳥獣害グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

収穫期の果樹のカラス被害対策には防鳥網の設置が確実であるが、資材費、設置労力、維持管理が問題となる。防鳥網より簡易な対策として、テグスと防鳥網を組み合わせたカラス侵入抑制技術「くぐれんテグス君」を2011年度に徳島県と共同で開発したが、「くぐれんテグス君」は側面部分の防鳥網の設置に脚立が必要であること、防鳥網が強風に弱いこと等が課題になっていた。
そこで、本研究では、防鳥網を使わずにカラスの侵入を抑制するために、側面をテグス設置に変え、脚立作業なしで設置できる簡易型のカラス侵入抑制技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「くぐれんテグスちゃん」は、弾性ポールを使って張る圃場上面の1m間隔のテグスと、5段の受け具を付けた縦支柱を使って張る側面のテグスによって構成される(図1)。
  • 「くぐれんテグスちゃん」は脚立をまったく使わずに設置でき、30m×100m(30a)に設置する資材費は従来型「くぐれんテグス君」とほぼ同等の12.2万円で(表1)、2人作業での設置時間は約2割削減の19.5時間/30aである。テグスが劣化するまでの数年間は、枝に擦れて切れたテグスの張り直しのみで維持できる。
  • 上面のテグスは、弾性ポールを曲げて地上作業で張る。側面のテグスを張るための縦支柱は、ハウス用フィルム止め具の先端をカットしたものをテグスの受け具として5段の間隔を測って径22mmのハウスパイプに取り付け、地面に打ち込んだ径19mmのハウスパイプにかぶせるように差し込んで立てる。地上からテグスを手製の竿で持ち上げて、縦支柱に付けた5段の受け具にテグスを落とし込むように入れて張る(図2)。
  • 側面のテグスの適切な設置間隔は、大型フライングケージで飼育カラスによる試験を行い、0.5m間隔で4本、外周柵への止まりを防ぐために柵上0.15mに1本を張ることが実用的であることを明らかにしている。
  • 中央農業研究センター構内に設置した10m×15mの模擬果樹園に餌台を配置し、「くぐれんテグスちゃん」、「くぐれんテグス君」、対策資材の設置なし(対照区)の3設定をランダムに週ごとに変更した野生カラスに対する効果検証試験では、カラス侵入回数と試験餌の消費量は簡易型「くぐれんテグスちゃん」と従来型「くぐれんテグス君」はほぼ同等で、対照区とは大きな差がある(図3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:生産者、鳥獣害対策指導員、農業資材製造/販売企業
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の結果樹面積(2018年度)約18万haの5%
  • その他:脚立作業のない簡易な方法であることを実感できる動画資料をNAROchannelで公開する。

具体的データ

図1 「くぐれんテグスちゃん」の構造,表1 30m×100m(30a)の果樹園に設置する場合の資材費,図2 縦支柱に付けた受け具に、テグス(赤の点線で表示)を手製の竿で持ち上げて入れることで、地上からの作業だけで側面のテグスを張ることができる,図3 野生カラスに対する効果検証試験の結果

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2020年度
  • 研究担当者:吉田保志子、佐伯緑、山口恭弘
  • 発表論文等:
    • 農研機構(2021)「果樹園のカラス対策簡易型「くぐれんテグスちゃん」標準作業手順書」(2021年7月公開)
    • 農研機構(2021)「果樹園のカラス対策「くぐれんテグスちゃん」設置手順動画」(2021年9月公開)