枝肉格付A5の黒毛和種肥育牛は枝肉格付A3より筋肉内脂肪細胞が肥大化している

要約

黒毛和種去勢肥育牛において、枝肉格付A5の筋肉内脂肪細胞のサイズは、枝肉格付A3の筋肉内脂肪細胞より有意に大きく、筋肉内脂肪細胞が肥大化している。

  • キーワード:黒毛和種、枝肉格付、脂肪交雑、筋肉内脂肪細胞
  • 担当:中央農業研究センター・飼養管理技術研究領域・家畜飼養グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

筋肉組織内部等の、通常は脂肪が蓄積しない部位に蓄積する脂肪は異所性脂肪と総称されている。肥満の進行に伴い脂肪細胞は肥大化するが、異所性脂肪である筋肉内脂肪の蓄積状態と筋肉内脂肪細胞の肥大化との関連は、ヒトや実験動物を含めこれまで詳細は不明である。
牛肉生産では、異所性脂肪である筋肉内脂肪組織の蓄積が重要視され、枝肉格付に大きな影響を及ぼしている。特に黒毛和牛の肥育では、枝肉格付の向上を目指し、筋肉内脂肪蓄積の増加を目指した様々な飼養管理技術の改善が試みられている。しかし現状では、肥育牛における筋肉内脂肪蓄積の程度を判断するパラメーターとして、脂肪蓄積の量的パラメーターであるBMS. Noとロース粗脂肪含量以外の手段は存在しておらず、ヒトや実験動物において脂肪細胞の分化状態を示し脂肪蓄積の質的パラメーターとして汎用されている、脂肪細胞サイズの肥大化に関しては明らかになっていない。
そこで本研究では、脂肪蓄積能力の高い黒毛和種去勢肥育牛において、これまで不明であった枝肉格付とロース部位の筋肉内脂肪細胞の肥大化の関連を明らかにし、筋肉内脂肪蓄積量の多い格付A5の枝肉に特有な新たなパラメーターを探索することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種去勢肥育牛において、枝肉格付A5のロース部位の筋肉内脂肪細胞は、A3の筋肉内脂肪細胞より細胞のサイズが大きく肥大化している(図1)。
  • ロース部位の筋肉内脂肪細胞サイズ(細胞直径)の平均値は、枝肉格付A5がA3より有意に大きい(図2)。
  • ロース部位の粗脂肪含量は、枝肉格付A5がA3より有意に高い(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 肥育牛の筋肉内脂肪蓄積に関する新たな指標として活用できる。
  • 黒毛和種去勢肥育牛51頭(A3(n=7),A4(n=24), A5(n=20))の、枝肉格付、ロース部位の筋肉内脂肪細胞サイズ、およびロース部位の粗脂肪含量分析データを用いた結果である。

具体的データ

図1. A3、A4、A5等級におけるロース筋肉内脂肪細胞像,図2. 枝肉格付毎のロース筋肉内脂肪細胞サイズ平均値(箱ひげ図横線:中央値、×印:平均値),図3. 枝肉格付毎のロース粗脂肪含量(箱ひげ図横線:中央値、×印:平均値)

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2018~2020年度
  • 研究担当者:山田知哉、神谷充、樋口幹人
  • 発表論文等:Yamada T. et al. (2020) Anim. Sci. J. 91:e13449