白色粘着トラップおよびメッシュ農業気象データを用いたイチモンジセセリの発生時期の予測

要約

白色粘着トラップによる成虫の発生状況の調査とメッシュ農業気象データを用いたイチモンジセセリの有効積算温度計算により、イネに被害を及ぼす第2世代幼虫の水田内における発生時期を予測できる。

  • キーワード:イチモンジセセリ、メッシュ農業気象データ、発生予察、白色粘着トラップ
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・虫害防除グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イチモンジセセリは、直播、有機栽培、および飼料用のイネにおいてしばしば多発生し、幼虫による葉の食害が問題となっている。本種を効率的に防除するためには、イネに被害を及ぼす第2世代幼虫の発生時期を的確に予測し、防除適期である若~中齢幼虫発生期に化学合成殺虫剤等を散布する必要がある。しかし、本種について簡便で統一的な発生予察法はなく、効率的な予察技術の開発が求められている。このため、本研究では効率的で簡便な手法として、白色粘着トラップによる成虫の発生調査とメッシュ農業気象データを用いた有効積算温度計算による幼虫発生時期の予測法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 白色粘着トラップをイネの草冠の高さに背合わせで垂直に設置する(図1)ことにより、イチモンジセセリ第1世代成虫の発生状況を把握できる。
  • 白色粘着トラップに成虫が初めて捕獲された日を第1世代成虫の産卵前期間初日として起算日に設定し(図2)、メッシュ農業気象データを用いて有効積算温度計算を行うと、2齢期と3齢期の中間点である3齢化日と見取り調査による若~中齢幼虫の発生が最も盛んな日の実測日とが概ね一致(表1)し、本種第2世代幼虫の発生時期を予測できる。

成果の活用面・留意点

  • メッシュ農業気象データを用いるイチモンジセセリ発生予測手法は圃場単位で活用できる。なお、メッシュ農業気象データ(https://amu.rd.naro.go.jp/)は利用する際に登録が必要となる。
  • 有効積算温度の計算には、発育ゼロ点と有効積算温度を、それぞれ産卵前期間で13.4°Cおよび63.8日度、卵期で13.4°Cおよび54.9日度、1齢幼虫期および2齢幼虫期で12.2°Cおよび42.7日度を用いる。
  • 本種の防除適期である若~中齢幼虫発生期は、卵・幼虫・蛹に占める若~中齢幼虫の割合が最も高い時期を示す。なお、若齢幼虫は1齢および2齢幼虫、中齢幼虫は3齢および4齢幼虫を指す。
  • 本成果は、茨城県龍ヶ崎市のデータによる検証結果であるため、本成果を他の地域に導入する際には各地における予測値と実測値の適合性を検証する必要がある。

具体的データ

図1 白色粘着トラップに捕獲されたイチモンジセセリの様子,図2 白色粘着トラップによる成虫の捕獲消長と見取り調査による卵・幼虫・蛹の密度推移 (2017),表1 イチモンジセセリの各ステージにおける発生予測日と実測日との比較

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(発生予察体制転換)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:石島力、世古智一、石崎摩美、平江雅宏
  • 発表論文等:石島ら(2020)関東病虫研報、67:35-38