白色粘着トラップによるイネカメムシ成虫のモニタリング

要約

イネカメムシ成虫の発生状況の把握には、白色粘着トラップをイネの草冠の高さで地面と垂直に設置する方法が有効である。アカスジカスミカメ等の他の斑点米カメムシ類の発生調査に用いられるフェロモンには影響されないので、他の斑点米カメムシと同時モニタリングが可能である。

  • キーワード:斑点米カメムシ、イネカメムシ、白色粘着トラップ、同時モニタリング、発生予察
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・虫害防除体系グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イネカメムシは、関東以西の本州、四国、九州、沖縄に分布する斑点米カメムシ類の主要種である。2010年代に入り茨城県南部を中心に発生と被害が報告されている他、多くの他府県でも発生と被害が報告されている。本種は、籾の基部を吸汁加害する斑点米カメムシとして知られているが、その加害がひどい場合には不稔となり、減収を引き起こす。このため、本種の発生地域において発生量や発生時期に応じた発生状況の効率的な調査法の開発が防除に必要である。そこで、本研究では従来法のすくい取り法と比べて簡便な手法として、白色粘着トラップを用いた本種成虫のモニタリング法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 畦畔から10m程度入った水田内に、 イネの草冠の高さに白色粘着板(24×30cm)を2枚背合わせで垂直にして、クリップで支柱等に固定したトラップにイネカメムシ成虫が捕獲される(図1)。
  • 白色粘着トラップによる本種成虫の捕獲消長は、従来法である捕虫網によるすくいとり法による成虫の捕獲消長と同じ傾向を示す(図2)。
  • 白色粘着トラップに、他の斑点米カメムシ類の合成フェロモン剤を設置しても、イネカメムシ成虫の捕獲数は同程度である(図3)。したがって、合成フェロモン剤を用いるカスミカメ類等の斑点米カメムシとの同時モニタリングが可能であり、効率的な発生予察が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本種発生予察技術を開発するための基礎資料となる。
  • トラップの交換時(概ね1週間毎)に、草冠の高さの変化に応じて高さを調節する。
  • トラップにはフェロモン等誘引剤は不要である。
  • 本種は概ねイネの出穂に合わせて水田内に侵入するため、出穂1~2週間前に設置するのが望ましい。

具体的データ

図1 白色粘着トラップの設置状況,図2 水田内に設置した白色粘着トラップとすくいとりのイネカメムシ成虫の捕獲数の推移 (2019),図3 各種斑点米カメムシ類のフェロモン剤を設置した白色粘着トラップによるイネカメムシ成虫の捕獲数

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018~2020年度
  • 研究担当者:石島力、石崎摩美、平江雅宏
  • 発表論文等:石島ら(2020)関東病虫研報、67:39-45