イアコーンサイレージ生産・利用技術マニュアル第2版

要約

イアコーン(トウモロコシ雌穂)サイレージの生産利用技術についてわかりやすく解説したマニュアルである。第1版の内容に、耕畜連携による生産利用体系事例や肉用牛の給与メニュー例を追加し、畜産、畑作いずれの生産者が導入する場合にも活用できる。

  • キーワード:トウモロコシ、イアコーンサイレージ、乳牛、肉用牛、耕畜連携
  • 担当:北海道農業研究センター・酪農研究領域・自給飼料生産・利用グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9263
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

飼料用トウモロコシの雌穂を収穫調製したイアコーンサイレージは、栄養価が高く、低コストで生産できる国産濃厚飼料として生産および利用の一層の普及拡大が期待されている。イアコーンサイレージは泌乳牛のみならず肉用牛に対する給与利用への関心が高く、さらに、畑作経営が輪作作物の一つとして導入したいとの希望もあり、手引きとなる参考資料作成の要望が高まっている。2013年作成のイアコーンサイレージ生産・利用マニュアル第1版は、イアコーンサイレージの大規模収穫・調製技術を中心に、栽培法や飼料特性や乳牛への給与技術について解説したものであるが、これに、2013年以降に実施した生産利用技術に関する現地実証試験の成果を加え、イアコーンサイレージの栽培~収穫調製~乳肉用牛への給与技術等をより多くの関係者にわかりやすく提示する目的で「イアコーンサイレージ生産・利用技術マニュアル第2版」を作成する。

成果の内容・特徴

  • 本技術マニュアル(図1)は、北海道内の試験研究機関および複数の地域で取り組んだ現地実証試験データ等に基づき、イアコーンサイレージの生産利用に関する技術情報をとりまとめたものであり、1.イアコーンサイレージとは、2.イアコーンサイレージの作り方、3.イアコーンサイレージの使い方、の3部構成としている。
  • 第1版では、トウモロコシ雌穂の利用部位と名称ならびに栄養価(TDN含量)については海外の文献から引用したが、第2版では、植物体全体を利用するホールクロップサイレージを含め、トウモロコシの利用部位による調製した飼料の一般名称と収穫調製機械を示すとともに、北海道で生産したイアコーンについて動物試験で査定したTDN含量を明記した。
  • 第2版では、イアコーンサイレージの作り方に「5)輪作への導入」の項を追加し、収穫後の残さの処理方法、残さの鋤込みによる畑土壌中の気相割合の増加(図2)を示し、土壌物理性の改善効果例として解説している。
  • 泌乳牛への給与効果として、給与飼料中に含まれる圧片トウモロコシの代替としてイアコーンサイレージを給与することで、甘い香りに寄与するラクトン類の乳中含量が高まること(図3)を示している。
  • 肉用牛肥育での給与例として、イアコーンサイレージを給与して配合飼料を節減する飼料メニューにより、慣行飼料と肉質は同等で、増体重が優れる(図4)ことも提示している。さらに、実証試験に基づく生産コストの試算例として、道内でのTMRセンター利用型で50円/kgTDN,耕畜連携型で51円/kgTDNを示している。

普及のための参考情報

  • 普及対象:イアコーンサイレージ生産利用技術導入に関心のある生産者、農業生産法人、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:北海道内を中心とした全国で約500ha
  • その他:マニュアル冊子体は農協・普及センターおよび研究所に配布予定。今後、北海道農業研究センターホームページにおいて公開を予定している。

具体的データ

図1「イアコーンサイレージ生産・利用技術マニュアル第2版」表紙;図2 収穫残さをディスクハローで処理した時の土壌(深さ12.5cm)における三相分布の推移;図3 乳中ラクトン含量の例;図4 乳用種去勢肥育牛の体重の推移

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(25補正「革新プロ」、27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2010~2016年度
  • 研究担当者:根本英子、大下友子、上田靖子、青木康浩、岩渕慶(ホクレン)、渡部敢(道総研畜試)、浅田正嗣(家畜改良センター)、久保田哲史
  • 発表論文等:
    1)上田ら (2014) 日畜会報、85(3):301-307
    2)Nemoto E. (2017) JARQ ,51(3):209-215
    3)農研機構 (2017)「イアコーンサイレージ生産・利用マニュアル第2版」(2017年4月3日)