高度複合病害抵抗性テンサイ品種「北海104号」

要約

テンサイ「北海104号」は、主要病害である黒根病および褐斑病に対して北海道の優良品種で最も強い抵抗性を有し、そう根病抵抗性と抽苔耐性を備えた高度複合病害抵抗性品種である。

  • キーワード:テンサイ、高度複合病害抵抗性、黒根病、褐斑病、抽苔耐性
  • 担当:北海道農業研究センター・畑作物開発利用研究領域・テンサイ育種グループ
  • 代表連絡先:電話011-857-9212
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

北海道のテンサイ栽培では、近年、黒根病や褐斑病の多発に起因して収量低下が問題となっている。そのため、畑輪作体系の維持や製糖関連産業等の地域経済にも大きな影響を及ぼしている。気候変動に関する将来予測によれば、テンサイでは気温上昇と降水量の増加に伴い、黒根病や褐斑病の初発が早期化し、発生量も増加すると予想されており、今まで以上に強い病害抵抗性品種が求められている。北海道の優良品種では、「北海みつぼし」が黒根病に、「リボルタ」が褐斑病に高度抵抗性を持つが、これらは原料栽培時に発生する当年抽苔への耐性に問題がある。そこで、北海道農業研究センターが保有する黒根病および褐斑病抵抗性の種子親に、海外種子会社のそう根病抵抗性の花粉親を交配し、主要3病害に対して高度抵抗性を有し、抽苔耐性にも強い複合病害抵抗性品種を早期に開発する。

成果の内容・特徴

  • 「北海104号」は、国際共同研究により北海道農業研究センターの黒根病および褐斑病抵抗性に優れる種子親「JMS72」とMariboHilleshögのそう根病抵抗性の花粉親「POLL-5015」を交配して育成した単胚・二倍体一代雑種である。
  • 「北海104号」の黒根病抵抗性は"強"であり、北海道の優良品種で最も強い抵抗性である(表1、図1)。
  • 「北海104号」の褐斑病抵抗性は"かなり強"であり、北海道の優良品種で最も強い抵抗性である(表1)。
  • 「北海104号」は、抽苔耐性が「北海みつぼし」および「リボルタ」よりも優れる(表1)。
  • 「北海104号」は、対照品種である「北海みつぼし」および「リボルタ」と比較して、糖量はやや少ない(表2)。
  • 黒根病に起因する根腐症状が発生する条件では、「北海104号」は「リボルタ」より糖量がやや優るなど(図2)、近年被害が拡大している主要病害の発生に対しても安定生産が可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:テンサイ生産者、テンサイ製糖各社
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:北海道一円に500ha(平成32年以降)
  • 種子親の「JMS72」は2017年に品種登録出願(第32585号)済みである。
  • その他:根腐病抵抗性が"やや弱"であるため、適切な防除に努める。

具体的データ


その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2010~2017年度
  • 研究担当者:松平洋明、黒田洋輔、岡崎和之、上田重文、高橋宙之、田口和憲、Rickard Jonsson(MariboHilleshög)
  • 発表論文等:
  • 1) 田口(2014)育種学研究、16(4):186-191
    2) Taguchi K. et al. (2011) G3 1(4):283-291
    3) 松平ら「北海104号」品種登録出願予定(2018年)