国産トウモロコシ子実サイレージで泌乳牛用飼料の圧ぺんトウモロコシを代替可能

要約

国産トウモロコシ子実サイレージで輸入圧ぺんトウモロコシを代替した飼料を泌乳牛に給与すると、飼料の消化性、窒素利用効率の向上といった効果が認められ、採食量、乳量および乳成分は維持される。

  • キーワード:消化率、飼養成績、窒素出納、ハイモイスチャーシェルドコーン、泌乳牛
  • 担当:北海道農業研究センター・酪農研究領域・自給飼料生産・利用グループ
  • 代表連絡先:電話011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

国内の酪農生産は圧ぺんトウモロコシ(FC)に代表される輸入穀物に大きく依存しているが、持続性の高い家畜生産体系を確立するには栄養価の高い穀物飼料の自給が求められる。近年、自給濃厚飼料の候補の一つとして、飼料用トウモロコシの子実のみを完熟期に収穫、粉砕し、密封貯蔵してサイレージ調製するハイモイスチャーシェルドコーン(HMSC)が注目されている。HMSCの可消化養分総量含量はFCと同等であるため、FCを全量代替できる飼料として期待される。
未乾燥で穀実サイレージとして貯蔵したHMSCをFCの代替として泌乳牛へ給与する場合、その飼料特性の違いが栄養素の利用効率、飼養成績や生理状態へ及ぼす影響を考慮する必要がある。そこで、本研究では、FCの代替としてHMSCを泌乳牛に給与する際の成分消化率、窒素出納、飼養成績および栄養代謝に関連する血液性状について検討する。

成果の内容・特徴

  • HMSCの中性デタージェント繊維(aNDFom)、粗タンパク質およびデンプン含量はそれぞれ9.0%、7.6%および62.9%で、FCにおけるそれぞれ12.8%、7.7%および62.5%と大きな差はない。そのため、給与飼料中のFCを全量代替しても全体の飼料成分はいずれの項目についても同程度となる(表1)。
  • 平均産次、分娩後日数および乳量がそれぞれ2.5産次、138.2日および34.2kg/日であるホルスタイン種泌乳牛(n=6)にFC混合飼料またはHMSC混合飼料を給与すると、HMSC給与時にはFC給与時より泌乳牛の粗タンパク質消化率は高く、デンプン消化率も高い傾向が認められる一方、aNDFomの消化率に差は認められない(図1)。
  • HMSC給与時とFC給与時とで泌乳牛の窒素摂取量に差は認められないが、HMSC給与時にふん中に排泄される窒素は減少し、体から持ち出される窒素は少なくなる(図2)。
  • 泌乳牛の採食量、体重およびボディコンディションスコアの変化量、乳量および乳成分に代替による影響は認められず、飼養成績は維持される。栄養代謝に関連する血しょう成分は正常値の範囲であり、代替による影響は認められない(表2)。
  • 以上のように、泌乳牛へのHMSC給与時にはFC給与時と比べ飼養成績や血しょう成分は維持され、飼料の消化性や窒素利用効率の向上が認められることから、HMSCはFCを代替可能な自給濃厚飼料として有望と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、泌乳牛の飼養におけるトウモロコシ子実サイレージの利用・普及のための基礎知見となる。
  • 本成績の結果は初産牛3頭を含む試験から得られたものであり、体蓄積にまわる窒素が少ない経産牛の場合と結果が異なる可能性がある。

具体的データ

表1 給与飼料の乾物構成比および成分;図1 泌乳牛の飼料成分消化率(%);図2 泌乳牛の窒素出納(g/日);表2 泌乳牛の飼養成績および血しょう成分

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:多田慎吾、青木康浩、上田靖子、青木真理
  • 発表論文等:多田ら(2019)日草誌、64(4):225-231