チモシー採草地は晩秋期の放牧期間延長に利用できる
要約
2番草採草後、晩秋期まで備蓄したチモシー採草地再生草は放牧乳牛による採食性が高く、乳生産量を維持できる。晩秋期の放牧利用による翌春の1番草収量や草種構成への悪影響は認められない。放牧期間の延長により労働時間を削減できる。
- キーワード:チモシー採草地、晩秋期放牧、乳牛、放牧期間延長
- 担当:北海道農業研究センター・酪農研究領域・放牧・草地管理グループ
- 代表連絡先:電話011-857-9212
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
放牧は労働軽減に有効な飼養方式であり、放牧期間の延長によりその効果を一層高められる。一方、北海道の主たる牧草資源であるチモシーは2番草採草後も再生するが、採草地では利用されずに放置されている場合が多い。そこで、チモシー2番草収穫後の再生草を晩秋期まで備蓄後に放牧利用する際の、乳牛による利用性、翌春の1番草収量および草種構成を調査し、その実用性を検証するとともに、放牧期間延長技術の確立を図る。また、導入事例をもとに労働時間の短縮効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 2番草採草後に晩秋期まで備蓄したチモシーの可消化養分総量(TDN)含有率は70%前後と高栄養価で利用率は70%以上と高く、放牧延長期間中は従前の乳生産水準を維持できる(表1)。50頭の牛群について、放牧利用開始時の草量と放牧時間別に延長可能日数の目安を表2に示す。
- 晩秋期放牧を行った採草地の翌春1番草乾物収量は、晩秋の放牧を行わない採草地(無放牧区)と比較して低下は認められない(図1)。チモシー採草地は更新後10年程度経過するとイネ科雑草が優占する例が多いが、晩秋期放牧を10年以上継続した調査地(十勝)においてチモシーの優占が維持される(図2)。よって、晩秋期の放牧利用による翌春1番草の収量や草種構成への悪影響は認められない。
- 導入事例農家(経産牛50頭、放牧期間延長に利用した草地9.3ha)への聞き取りでは、舎飼い時に比べ、放牧期間延長時には牛舎清掃・管理時間が減少し、1日あたり2.0時間/2名の家族労働時間を削減できる。
成果の活用面・留意点
- 既に搾乳牛放牧を実践している酪農家が、既存放牧地(兼用地含む)または牛舎に隣接したチモシー採草地を利用する場面で活用できる。
- 放牧開始日は再生草の生育が停止する日平均気温5°Cとなる日を、終牧日は草丈12cmを目安とする。給水施設の凍結や放牧牛の動線による裸地の発生に留意する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2017年度
- 研究担当者:八木隆徳、杉戸克裕、須藤賢司
- 発表論文等:八木ら(2018)日草誌、64(3):171-174