ドローンを用いた牧草育種における個体選抜の評価法

要約

ドローンと画像解析法で得られる指標relative Green Red Vegetation Index (rGRVI)を利用し、牧草の草勢および罹病程度を評価する手法である。本手法は、牧草育種における優良個体の効率的・客観的選評価に利用できる。

  • キーワード:画像解析法、選抜評価法、ドローン、Unmanned aerial vehicle (UAV)、relative Green Red Vegetation Index(rGRVI)
  • 担当:北海道農業研究センター・作物開発研究領域・飼料作物育種グループ
  • 代表連絡先:電話0287-37-7000
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

飼料生産性を向上させる多収かつ高品質な牧草品種の開発が求められている。母集団が大きいほど優良個体を選抜できる可能性が高くなるため、より大きな集団を扱うことが望ましいが、優良個体の選抜は育種家による観察評価により主に判断され、その規模は育種家の対応能力に依存しているため、扱える個体数には限界があり、スケールメリットが活かしきれない。そのため育種家の能力に依存しない、客観的で大きな集団を効率的に取り扱うことができる選抜評価法の開発が期待されている。一般的にドローンの名称で知られている無人航空機(Unmanned aerial vehicle、UAV)は高性能化、操作の簡便化、低価格化により広く普及してきており、鳥瞰的に種々のデータを得られるため汎用性は高い。また、画像解析法は視覚情報を客観的数値に置き換えることが可能な技術である。そこで、本研究では、ドローンと画像解析法を利用して効率的・客観的な牧草育種圃場での個体選抜評価法を開発する。

成果の内容・特徴

  • オーチャードグラス(以下、OG)選抜圃場(図1A)において、育種家による草勢評点(育種家A)と空撮画像における個体面積(図1B)の間には高い正の相関(r = 0.77、p < 0.01)がある(図2A)。
  • 育種家草勢評点とプロット面積内(図1C)の緑の多さを表す指標relative Green Red Vegetation Index (rGRVI) = ((G-R)/(G+R)の相対値、範囲0~100)の間には高い正の相関(r = 0.80、p < 0.01)がある(図2B)。個体面積とrGRVIの間には高い正の相関(r = 0.86、p < 0.01)がある(図2C)。育種家草勢評点、個体面積とrGRVI間にはそれぞれ高い正の相関があるため、いずれも選抜指標として利用可能であるが、rGRVIは個体面積より画像解析が容易である。
  • rGRVIは他のOG選抜圃場の別の育種家草勢評点(育種家B)とも高い正の相関(r = 0.80, p < 0.01、図2D)があり、イタリアンライグラス(以下、IR)選抜圃場の別の育種家草勢評点(育種家C)とも高い正の相関(r = 0.76、p < 0.01、図2E)があることから適用性が高い。
  • 草勢評価に関して、高度20~100m(20m間隔)で得られた空撮画像において、各高度におけるrGRVI間はそれぞれ高い正の相関(r = 0.95~0.98、p < 0.01)を示す。また、曇天時と晴天時における空撮画像間でもrGRVIは高い正の相関(r = 0.93、p < 0.01)を示すことから、日射量に左右されず利便性が高い(データ省略)。
  • 葉枯れ性病害の罹病程度とrGRVI間に高い負の相関(r = -0.78、p < 0.01、図2F)が存在するため、rGRVIは有用な評価指標として期待される。
  • 評価者の能力に依存せず、遠隔地にも適用可能な個体選抜評価法として利用できる。

成果の活用面・留意点

  • rGRVIはPhotoshopやFiji等の画像解析ソフトで算出できる。
  • 雑草がノイズとなってrGRVIに影響するため、除草など適切な圃場管理が必要である。
  • 撮影面積と画像解像度を勘案した撮影高度の条件設定が必要である。

具体的データ

図1 オーチャードグラス選抜圃場の一部.,図2 育種家評点、個体面積とrGRVIの関係

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:秋山征夫、久保田明人、藤森雅博、眞田康治
  • 発表論文等:秋山ら(2019)日草誌、65:8-14