北海道向け多収水稲品種「雪ごぜん」の高品質多収栽培技術

要約

「雪ごぜん」において整粒歩合70%以上の高品質と多収を両立するための目標総籾数は3.6万粒/m2であり、730kg/10aの多収が達成可能である。側条施肥の増肥と疎植栽培を組み合わせることによって、省力化と倒伏の軽減を図ることが可能である。

  • キーワード:業務用米、1等米、多肥疎植栽培、目標総籾数
  • 担当:北海道農業研究センター・水田作研究領域・水田輪作体系グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9254
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水稲の作付面積が減少している状況ではあるが、業務用米に対する需要は高い。北海道では、「ななつぼし」や「きらら397」が主な業務用米品種として栽培されているが、低価格が求められる業務用米において生産者が安定的な収益を得るためには、より収量性の高い品種を栽培する必要がある。そこで、業務用米向け多収水稲品種「雪ごぜん」において安定的に多収を得られる栽培方法を明らかにすることを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 「雪ごぜん」においては、総籾数3.6万粒/m2を上回る条件で整粒歩合が1等米の基準である70%を下回る場合がある(図1)。総籾数3.6万粒/m2からは、730kg/10aの収量が得られる。
  • 収量730kg/10aを達成するためには、穂数490~530本/m2、一穂籾数65~75粒が目安となる(表1)。整粒歩合70%以上を安定的に得るためには、登熟期積算気温980°C以上(登熟期間50~55日)が必要である。「ななつぼし」と比較すると1、2日程度出穂が遅く、茎数の増加もやや緩慢であるため(データ省略)、早期移植や活着後の浅水管理によって初期分げつを確保し、目標穂数の達成に努める。成熟期の地上部乾物重は1300~1350kg/10a、窒素吸収量は11~12kg/10aが必要である。千粒重は約24.5gと大きいが、粒厚分布は「ななつぼし」と同程度であることから(データ省略)、「ななつぼし」と同程度の篩目で選別する(大きな篩目で選別すると歩留まりが低下する)。
  • 標肥標植と比較すると、標肥疎植では総籾数不足によって減収する(表2)。省力化のために疎植栽培とする場合には、多肥(側条施肥の増肥)と組み合わせることで減収程度を小さくすることができる。多肥疎植栽培では、標肥標植栽培と比較すると7ポイント程度整粒歩合が低下する場合がある。
  • 「雪ごぜん」は耐倒伏性がやや不十分であり、稈長が80cm以上になると倒伏の危険性が高まる(図2)。特に多肥標植では、稈長85cm以上で倒伏程度が約4の甚大な倒伏が発生する場合がある。多肥疎植栽培では、稈長85cm以上の条件でも倒伏程度は約2までと、倒伏の発生を軽減することができる。
  • 「雪ごぜん」は、「きらら397」や「ななつぼし」と比較すると玄米タンパク含有率は低く、アミロース含有率は高い(データ省略)。炊飯米は、白く、粘りが少なく、やや硬いという特徴があり、白飯、おにぎり、酢飯、炊き込みごはんなど、業務用として幅広い適性を持つ。

普及のための参考情報

  • 普及対象:北海道において「雪ごぜん」を栽培する生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:北海道の水稲栽培地帯において300ha
  • 「雪ごぜん」はいもち病抵抗性が十分ではないため、栽培にあたっては基幹防除を徹底する。
  • 「雪ごぜん」は産地品種銘柄に設定されている(2020年8月現在)。

具体的データ

図1 総籾数と整粒歩合(左)、整粒歩合と精玄米収量(右)との関係,表1 目標収量(730kg/10a)達成の目安,表2 「雪ごぜん」の収量および玄米品質,図2 「雪ごぜん」における稈長と倒伏程度の関係

その他

  • 予算区分:委託プロ(業務・加工用)、交付金
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:林怜史、八木岡敦、君和田健二、長南友也
  • 発表論文等:林ら(2019)北海道向け水稲多収品種「雪ごぜん」栽培マニュアル