道央水田地帯における農業経営体数減少、経営規模拡大の将来動向予測

要約

道央水田地帯における2030年までの将来動向予測として、農業経営体数が大幅に減少する一方、1経営体当たり経営規模の拡大は着実に進むことが見込まれる。同時に南空知・岩見沢市では100ha以上層が倍増以上となることが示される。

  • キーワード:道央水田地帯、将来動向予測、農業経営体数減少、規模拡大、100ha以上層
  • 担当:北海道農業研究センター・水田作研究領域・経営評価グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9254
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

1980年代後半以降、我が国水田農業の構造改革先進地=道央水田地帯では構造変動が進行してきている。あわせて、最近では戦後団塊世代の高齢農家層が厚いことから、今後急激な離農発生、規模拡大が想定される。その際、留意すべきは道央水田地帯では上川中央(小規模地域)、北空知(大規模地域)、中空知(小規模地域)、南空知(大規模地域)という地域性が存在する点である。こうした中、将来的に各地域で農業経営体がどの程度減少していくか、一方で経営規模の拡大はどこまで進むか、が問われると言える。特に、大規模地域として推移してきた南空知・岩見沢市の動きが注目される。
そこで農業センサス個票データ連結のマルコフ推移確率行列モデルを適用し、上記4地域、及び南空知・岩見沢市を対象とした2015~2030年までの農業経営体数減少、1経営体当たり経営規模の将来動向予測を行う。

成果の内容・特徴

  • 農業経営体数の将来動向:農業経営体数では激しい減少が見込まれる。その減少率は2015~2020年期に全地域が二桁台と高率を示した後、2020年以降は一桁台に収まる地域も複数現れる。ただ、経営体が継続的に減少していくことに変わりない。その結果、2015~2030年を通して、農業経営体数は上川中央では3分の1が減少し、南空知でも4分の1の減少となる(表1)。
  • 経営規模の将来動向:残る農業経営体の農地集積により、1経営体当たり経営規模の拡大は着実な進行が見込まれる。まず、上川中央、中空知では現状の11~12ha規模から2030年には17ha台に到達する。一方、北空知、南空知は2025年には20ha台に到達し、2030年には各々25ha、22.3haにまで拡大される。このように、今後いずれの地域においても経営体数が減少する一方、1経営体当たり規模は着実に拡大していく(表2)。
  • 南空知・岩見沢市の将来動向:岩見沢市では2015~2030年にかけて、いっそうの大規模化が見込まれる。まず、農業経営体数は1,066体から766体へと30%弱が減少する。次いで、モード層は10~15ha層から30~50ha層へと3ランクも上位へ移行する。同時に、最上位階層の100ha以上層は7経営体から18経営体へという倍増以上の先鋭的な動きが示される。1経営体あたり経営規模でみると、それは16.9haから23.5haへの拡大となる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 各地域における将来を見据えた、特に経営規模拡大に対応したスマート農業施策立案の参考となる。あわせて、こうした将来動向予測結果は市町村レベルでも提示できる。

具体的データ

表1 農業経営対数減少の将来動向,表2 1経営体あたり規模の将来動向,表3 岩見沢市における農業経営対数減少、経営規模拡大の将来動向

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:細山隆夫
  • 発表論文等:細山(2019)フロンティア農業経済研究、21(2):26-39