自動操舵機能の利用によるトラクタ作業の負担軽減と精度向上の効果

要約

自動操舵機能を用いたトラクタオペレーションは、オペレータの心理的負担を軽減する。自動操舵を用いた作業は、機械作業幅より実際の行程間の幅を狭くとる整地作業等で、作業の重複を小さくすることができ、行程数は減少し省力的な作業が可能になる。

  • キーワード:自動操舵、オペレータ、心理的負担、行程数
  • 担当:北海道農業研究センター・大規模畑作研究領域・大規模畑輪作研究グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

自動操舵装置は北海道に平成30年度までに累計で約6000台が導入されている。急速な普及はオペレータの負担軽減に寄与したと考えられるが、実際の農作業において負担の軽減効果を検証した例は無い。また、その精度については報告例があるものの、精度の向上に伴う省力性を検証した事例も少ない。そこで、オペレータの負担軽減についてはダイズの中耕除草作業中のオペレータの心拍数と唾液アミラーゼ活性を指標として、肉体的負担と心理的負担をそれぞれ評価する(表1)。また、播種と整地作業における機械作業幅と、隣接行程とのずれの蓄積が作業精度と、作業行程数の削減に及ぼす影響を評価する。

成果の内容・特徴

  • 身体的な負担の指標値であるオペレータの心拍数は、作業時とその前後の差が小さく、自動操舵区と手動操作区の心拍数には有意差は認められない(データ省略)。一方、心理的な負担を示す唾液アミラーゼ活性は、手動操作区に比べて自動操舵区でほぼ一貫して低い(図1)。
  • オペレータに対するアンケート調査では、8割のオペレータは1時間以上4時間未満の作業で自動操舵の使用により労働負担の軽減を実感する(データ省略)。
  • テンサイの播種作業における手動操作の行程の間隔は作業機の理論的な作業幅より広い。自動操舵の使用により、隣接工程と機械作業幅のずれ(クロストラッキングエラー)は、手動操作のオペレーションに比べて縮小し作業の精度は高まるが、行程数は増加する(データ省略)。
  • ハローを用いた砕土・整地作業では、行程の間隔を機械作業幅に比べて狭くし、いわゆる「かけ残し」がでないように一部を重複した作業を行う。自動操作は作業精度が高いため、手動操作に比べて重複幅を狭く設定できる。このため、砕土・整地作業の行程数は自動操作により減少する(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 自動操舵装置の導入効果を評価する際の参考とする。
  • 唾液アミラーゼ活性は個人差が大きく、オペレータの個人差の影響を取り除く実験計画を組まないと小規模の試験で有意差を検出することは困難である。

具体的データ

表1 ダイズ中耕作業における作業負担の計測方法,表2 自動操舵による作業精度の向上とその効果,図1 ダイズ中耕作業時およびその前後の唾液アミラーゼ活性の推移(n=5)

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「経営体プロ」)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:辻博之、西脇健太郎、澁谷幸憲
  • 発表論文等:辻ら(2019)農研機構研究報告1. 19-25.