消費者視点に立った乳製品のPOP広告における原料乳・飼料情報の提示
要約
乳製品を購入する消費者の中には、原料乳の生産地や地元産の食材の使用を重視する消費者層がある。この消費者層を対象に、製品に付けたPOP広告で原料乳と飼料の産地表示を行うと、飼料に対する消費者の関心が高まり、製品をアピールしやすい。
- キーワード:自給飼料、乳製品、POP広告、消費者、産地情報
- 担当:北海道農業研究センター・水田作研究領域・経営評価グループ
- 代表連絡先:電話 011-857-9212
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
わが国の酪農業を持続的に発展させるためには、国産牛乳・乳製品の付加価値を高め、海外産との差別化を図る必要がある。国産牛乳・乳製品の差別化には、給与飼料情報の製品付与が有望と考えられるが、消費者に対する効果的な情報提供の方法については不明である。そこで、本研究では産地指定牛乳から製造した乳製品(ジェラート)を販売する6次産業施設において、訪問する消費者層の属性や意識調査を実施し、店頭におけるPOP広告やポスターから得られる情報と購買行動との関係を解析し、製品名や製品の特徴(給与飼料情報など)を表示する効果的な情報提示法を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 乳製品を購入する際、消費者が重視する項目をもとにクラスター分析を行ったところ、店あるいは味や価格などの製品自体を重視する消費者層と原料乳の生産地を重視する消費者層の2層が抽出された。原料乳の生産地を重視する消費者層では、製品に地元食材が使用されているかどうかを重視する割合も高い(表1)。
- POP広告やポスターに、A「農研機構との共同開発のエサによる原料乳を使用」、B「酪農家の栄養豊富なエサを用い輸入エサを減らした原料乳使用」、C「地元産飼料による地元産原料乳を使用」という3種類の内容の飼料情報を日替わりで表示した(図1)。購入者の中には、原材料の産地として飼料情報を掲載したCを表示した日で、表示内容に関心を持ち購入する人が多い(表2)。
- 消費者の中には、乳製品を購入する場合に、原料乳の生産地や地元産の食材の使用を重視する消費者層がある。自給飼料を給与した生乳の乳製品については、この消費者層を対象に、原料乳の生産地と合わせて飼料の産地表示を行うと、飼料に対する消費者の関心が高まり乳製品をアピールしやすくなる。
成果の活用面・留意点
- 自給飼料を給与した乳製品について、消費者の飼料への関心を高める販売方策として活用できる。
- 自給飼料を給与した乳製品であっても、自給率が100%であるとの消費者の誤解を招かないために情報提示を工夫する。
- 店がどのような場所にあるか、どのような来店客が多いかによって、乳製品を購入する場合に来店客が重視する程度も変わる可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「経営体プロ」)
- 研究期間:2017~2019年度
- 研究担当者:澁谷美紀、久保田哲史
- 発表論文等:
- 澁谷美紀、久保田哲史(2019)北農、86(2):22-27
- 澁谷美紀、久保田哲史(2020)フードシステム研究、26(4):289-294