イアコーン茎葉残渣の収集と乳牛ふん堆肥化の水分調整材としての利用

要約

圃場に散乱するイアコーン茎葉残渣をロールベールとして収集した時の収率は53-56%であり、茎葉残渣の茎長は7割以上が15cm以下である。半年間の貯蔵後の茎葉残渣の水分は20%程度で、水分調整材として乳牛ふんとよく混合することで腐熟の進んだ悪臭の少ない堆肥を生産できる。

  • キーワード:堆肥、イアコーン茎葉残渣、水分、ロールベール、低級脂肪酸
  • 担当:北海道農業研究センター・酪農研究領域・自給飼料生産・利用グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北海道は寒冷地であることに加え、堆肥化処理に必要な水分調整材が慢性的に不足しており、堆肥品質が低下する傾向にある。一般的にイアコーン収穫後の茎葉残渣は圃場にすき込まれているが、圃場から収集したイアコーン茎葉残渣を堆肥化の水分調整材として利用することで、堆肥化処理の適正化が期待できる。本研究ではイアコーン茎葉残渣を堆肥化の水分調整材として利用することを目的として、圃場に散乱する茎葉残渣をロールベールとして収集した時の収率、およびロールベールとして茎葉残渣を貯蔵する際の性状変化を調べるとともに、イアコーン茎葉残渣を乳牛ふん堆肥化の水分調整材として利用した時の堆肥性状を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 圃場に散乱するイアコーン茎葉残渣をレーキで集草、列状とした茎葉残渣をロールベーラーにより収集してロールベールとして貯蔵した後に、乳牛ふん堆肥化の水分調整材として利用する際の知見である。
  • 安平町の実証農家圃場および北農研圃場において実施したイアコーン茎葉残渣の収率は53-56%である。茎長分布の最頻値は5-10cmであり、全体の70%超が15cm以下の茎長である(図1)。
  • 回収直後の茎葉残渣の水分は60%程度である。イアコーン茎葉残渣の水分が高いためにロールベール内部の温度は貯蔵直後から上昇し、約2ヶ月間は60°C近くで推移するが、それ以降は気温と同程度の温度まで低下していく(図2)。半年間の貯蔵後の水分は、20%程度と水分調整材として利用できるレベルにまで低下する。
  • 3,300kgの乳牛ふん(水分:77.6%)と130kgのイアコーン茎葉残渣(水分:18.8%)を完全に混合する処理(混合処理)、または混合作業を行わず底部に同量の茎葉残渣を敷設し、その上に牛ふんを堆積する処理(敷設処理)の2つの処理を比較すると、堆肥温度は混合処理の方が高く(図3)、完成した堆肥の水分、悪臭成分である総低級脂肪酸濃度、そして腐熟の指標である生物化学的酸素要求量のいずれについても、混合処理の方が大幅に低くなる(表1)。
  • 堆肥化処理を開始する前に混合作業が必要となるが、頑強な物理性を有するイアコーン茎葉残渣を乳牛ふんと完全に混合することで、短期間で腐熟の進んだ悪臭の少ない堆肥を生産することができる。

成果の活用面・留意点

  • イアコーン茎葉残渣の水分が高い場合には図2のようにロールベールが発熱する。牧草ロールベールの場合、30-40%の水分で発火リスクが高まることが報告されている(戸苅ら、1986)ことから、貯蔵に際しては十分に注意する必要がある。
  • 茎葉残渣や土壌の水分が高い場合、レーキでの作業時に茎葉残渣に土が付着するため、ロールベーラーの内部に土が混入する。機械の故障につながる可能性があるため注意を要する。
  • 茎葉残渣を水分調整材として利用するためには半年間程度の貯蔵期間が必要なため、ロールベールに収集日時などの情報を記載しておくことが推奨される。
  • 本研究のイアコーン茎葉残渣収集のデータは、10月中旬~下旬にかけて北海道(安平町および札幌市)で実施されたものである。

具体的データ

図1 イアコーン茎葉残渣の茎長の分布,図2 貯蔵中のロールベール内部温度の推移,表1 開始および終了時の堆肥性状の比較,図3 混合処理および敷設処理の堆肥中央部の温度推移の比較

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「経営体プロ」)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:花島 大
  • 発表論文等:
    • Hanajima D. (2020) Anim. Sci. J. 91: e13323