RTK-UAVによる3次元計測の測位性能および作業省力効果
要約
RTK-UAV(ドローン)を用いた3次元計測は、地上基準点を使用しなくても10cm程度の草高変化を計測することができる。また、現地計測およびデータ処理時間は従来手法に比べて8割削減されるため、本手法の導入によりUAVによる3次元計測に係る労働時間が大幅に軽減できる。
- キーワード:無人航空機(UAV)、リアルタイムキネマティック(RTK)、Phantom 4 RTK、誤差、省力
- 担当:北海道農業研究センター・酪農研究領域・放牧・草地管理グループ
- 代表連絡先:電話 011-857-9212
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
UAV(ドローン)を用いた3次元計測は、圃場の凹凸や農作物の草高の計測等で広く用いられているが、高精度な位置情報を付与するためには、地上基準点(GCP)の設置・測位・後処理が必要である。例えば草地を対象とした場合、圃場内における複数のGCPの常設および保守は労力が大きく(強風・豪雨・動物による紛失・損壊、植物・積雪による遮蔽、傾斜地におけるアクセス困難)、また農業機械運用の障害となるなど多くの問題がある。そこで本研究では、GCP無しで正確な計測の実現が期待されるRTK-GNSS搭載型UAV(DJI Phantom 4 RTK)を用いた3次元計測手法における、位置情報の精度(再現性)および省力効果を明らかにし、RTK-UAV導入の有効性を検証する。
成果の内容・特徴
- RTK-UAV計測により作成した複数時期(5回)の3次元モデル(オルソモザイク画像)における同一地点の座標の再現性(精度)は、水平3~12cm(平均7cm)、鉛直3~5cm(平均4cm)程度である(表1)。
- UAVを用いた草高計測は2時期の3次元モデル(数値表層モデル)の差分により求めるため、その測定限界は鉛直精度の2倍と考えられる。したがって、RTK-UAV手法は10cm程度より大きい草高変化の計測に有効である。
- 1haの圃場を対象とした場合、RTK-UAV手法はGCPが必要な従来手法に比べて、現地計測および室内データ処理に係る労働時間が81%削減されるため(図1)、大幅な省力効果が得られる。
成果の活用面・留意点
- RTK-UAV手法は、草地管理以外の多くの分野にも適用することが可能である。
- RTK測位にはGNSS補正情報配信サービス(有償)が必要だが、その低価格化が急速に進んでいるため、RTK-UAVの利用はより容易になると期待される。
- RTK-UAVによる3次元モデルの地上測量結果との差は鉛直で平均30cmであり、GCP利用の場合(平均5~6cm)よりも劣るため、正確な測量が必要であればGCPを利用することが望ましい。
- 本成果は対地高度30mからの空撮結果に対する一事例であり、より高高度から計測した場合は誤差が増大する可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「AIプロ」)
- 研究期間:2018~2019年度
- 研究担当者:小花和宏之、坂上清一、八木隆徳
- 発表論文等:小花和ら(2019)地形、40(2):125-134