バレイショのジャガイモシロシストセンチュウ抵抗性検定法

要約

透明なプラスチックカップまたはポリポットに種イモを植え付け、ジャガイモシロシストセンチュウ卵を接種し、一定期間後にシスト(カップの場合は雌成虫+シスト)を計数することによって、ジャガイモシロシストセンチュウ抵抗性を評価する手法である。

  • キーワード:バレイショ、ジャガイモシロシストセンチュウ、抵抗性検定、カップ、ポット
  • 担当:北海道農業研究センター・生産環境研究領域・線虫害グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2015年にバレイショの重要病害虫であるジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida、以下Gp)の発生が国内で初めて確認され、大きな問題となっている。Gpはバレイショの根に寄生して減収被害を引き起こすほか、種イモ栽培の制限などの支障を生じさせる。Gpのまん延・増殖防止には抵抗性品種の利用が効果的であり、日本既発生の近縁種ジャガイモシストセンチュウ(G. rostochiensis、以下Gr)については、抵抗性バレイショ品種の開発・利用が進んでいる。GpはGr抵抗性品種にも寄生するため、Gp抵抗性品種の開発が求められている。しかし、Gp抵抗性を評価するには、線虫の増殖程度を定量的に調査する必要があるため、線虫の増殖の有無のみを調査する従来のGr抵抗性検定法を適用できない。
そこで本研究では、既にGp抵抗性品種育成を実施しているヨーロッパの手法をアレンジし、国内で実施可能なバレイショのGp抵抗性検定法を開発する。また、他の研究機関等でもGp抵抗性検定を実施可能にするため、抵抗性検定マニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • Gp抵抗性検定は透明プラカップ(本体:エムケイテック製「MH-3 透明」、蓋:同社製「MH-1~3 PE蓋」)を用いた「カップ検定」とポリポット(直径12cm、高さ10cm)を用いた「ポット検定」によって行う。前者は多系統の効率的な検定に、後者はより正確な抵抗性の評価に適する。
  • カップ検定では、カップに20g程度の種イモを植え付け、そこにGpを1,500~2,000卵接種し、約70日間培養後に根に着生した雌成虫数とシスト数を計数する。詳細な手順は図1に示す。
  • ポット検定では、ポットに種イモを植え付け、そこにGpを5,000~7,000卵接種し、約90日間栽培後にポット内に形成されたシスト数を計数する。詳細な手順は図2に示す。
  • カップ検定・ポット検定ともに、基準となる抵抗性"弱"品種(基準品種)とのシスト数(カップ検定の場合はシスト数+雌成虫数)の比から抵抗性を評価する。ヨーロッパでは「Désirée」を基準品種としているが、日本では入手困難であるため、「パールスターチ」または「さんじゅう丸」を用いる。なお、両品種ともに「Désirée」とほぼ同等にGpが増殖する(データ略)。
  • 表1に従って"1"~"9"の9段階または"弱"~"強"の5段階で抵抗性を評価する。前者の評価はヨーロッパで用いられており、論文等で使用が推奨される。後者の評価は前者を分かりやすくしたものであり、品種の普及場面で使用が推奨される。

成果の活用面・留意点

  • Gpは植物防疫法により検疫対象病害虫に定められている。Gpの導入にかかる必要な手続き等については、その地域を管轄する植物防疫所の指示に従う。
  • 原則として1品種・系統につき4反復以上実施する。
  • 既知の抵抗性品種「フリア」、「Eden」等も同時に検定に供試し、使用したGpが抵抗性を打破していないことを確認する(通常、両品種とも表1における"やや強"~"強"の抵抗性を示す)。
  • 検定結果に年次間差がみられる場合がある。
  • 使用後の土壌や器具等は、オートクレーブもしくは湿熱(70°C1時間以上)処理を施す。
  • マニュアルにはカップ検定とポット検定の実施法と諸注意を記載している。

具体的データ

図1 カップ検定の手順,図2 ポット検定の手順,表1 抵抗性の判定基準

その他