ジャガイモシロシストセンチュウ抵抗性品種「フリア」の特性
要約
バレイショ品種「フリア」は、ジャガイモシロシストセンチュウおよびジャガイモシストセンチュウに抵抗性を持つでん粉原料用品種である。「コナフブキ」と同等の枯ちょう期とでん粉収量である。「フリア」の作付けによりジャガイモシロシストセンチュウ密度を低減することができる。
- キーワード:バレイショ、でん粉原料用、ジャガイモシロシストセンチュウ、抵抗性
- 担当:北海道農業研究センター・畑作物開発利用研究領域・バレイショ育種グループ
- 代表連絡先:電話 011-857-9212
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
2015年に網走市内の圃場において、日本で初めてジャガイモシロシストセンチュウ(Gp)の発生が確認された。その後大空町でも発生が確認され、2018年末時点での発生面積は163圃場682haである。さらに2019年には新たに斜里町の圃場でも発生が確認されるなど、発生地域が拡大している。
現在網走市及び大空町の発生地域を対象に植物防疫法に基づく緊急防除として、Gpの発生が確認された圃場ではバレイショを含むナス科植物の作付けを禁止し、薬剤や捕獲作物を利用した防除が実施されている。緊急防除終了圃場では再発防止の観点からGp抵抗性品種を作付けすることが望ましい。現在作付けされているでん粉原料用品種はいずれもGp抵抗性を有していない。そのため、それらの品種と同等のでん粉収量を有し、Gp及びジャガイモシストセンチュウ(Gr)の抵抗性を有する品種が求められている。
そこで本研究では海外から導入したGp抵抗性品種「フリア」について、生産現場において適切な栽培が行われるように農業特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 「フリア」は我が国で初めて利用できるGp抵抗性品種である。
- 「フリア」は「コナフブキ」よりも上いもの数が多く、平均重は軽い。上いも重は「コナフブキ」より多収であるがでん粉価は低く、でん粉収量は「コナフブキ」並である(表1、図1)。でん粉品質は「コナフブキ」に近い(表1)。
- 「フリア」はGp抵抗性が"やや強"であり、栽培によりGp密度を低減でき、Gr抵抗性も有する(表2)。
- 栽植密度を疎植とし、開花期に窒素追肥することで大玉化するとともに多収となる(図2)。基肥窒素増肥でも同様の効果が得られる。
成果の活用面・留意点
- Gp緊急防除後の「フリア」作付圃場での適切な栽培のために活用する。
- 抵抗性の打破が海外で報告されているため連作を避けて適正な輪作を行うとともに、野良いもの処理を適切に実施する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「先導プロ」)
- 研究期間:2016~2019年度
- 研究担当者:
浅野賢治、田宮誠司、奈良部孝、相場聡、坂田至、下坂悦生、岡本智史、赤井浩太郎、大波正寿(道総研北見農試)、福田朋彦(ホクレン農総研)
- 発表論文等:
令和元年度北海道農業試験研究会議(成績会議)における課題名および区分「ばれいしょ地域在来品種等「フリア」の特性」(指導参考)