テンサイ抽苔耐性系統の効率的選抜が可能なDNAマーカー

要約

開発したDNAマーカーはテンサイの抽苔耐性に関わるBvBTC1座の6種類の遺伝子型が識別できる。抽苔耐性が強い系統での頻度が高いaa遺伝子型を指標とすることで抽苔耐性系統が効率的に選抜できる。

  • キーワード:遺伝子型、抽苔耐性、DNAマーカー、テンサイ
  • 担当:北海道農業研究センター・畑作物開発利用研究領域・テンサイ育種グループ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9212
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

原料栽培期間中に抽苔が発生すると収量・品質の低下、機械の損傷や機械作業の妨げの原因となるため、抽苔耐性の強い品種の育成は、テンサイの重要な育種目標の一つである。現在、抽苔耐性の改良は、人為的に低温処理を施して軽度に抽苔を誘発した苗を圃場に定植し、収穫までに抽苔しない株を選抜する方法で行われている。表現型に基づいたこの選抜法には、圃場で選抜する労力が大きいこと、気象条件によって選抜圧が異なること、選抜から後代の種子を得るまでに1~2年の期間を要する等の問題がある。近年、テンサイで発見されたBvBTC1は、一年生と二年生の生活史の転換に関与するマスター遺伝子であり、典型的な一年生や二年生に固有な変異を含む多くの変異が認められている。そこで、BvBTC1座の遺伝子型に着目して、抽苔耐性が強い系統に特有の変異を特定し、抽苔耐性の改善に有効なDNAマーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  • 日本のテンサイ系統のBvBTC1座には一塩基多型の変異に基づく3種類のハプロタイプ("a"、"g"、"o")が認められる(表1)。
  • BvBTC1座に設計した1種類のプライマーペアで増幅するPCR産物に制限酵素HhaIを処理すると、3種類のハプロタイプを組み合わせて生じる6種類の遺伝子型が判別できる(図1)。
  • 育成系統を抽苔耐性に基づきグループ分けすると、強いグループほどaa遺伝子型の出現頻度が高い(表2)。
  • BvBTC1座の遺伝子型が固定していない原系統(「NK-195BRmm-O」と「NK-280mm-O」)について、aa遺伝子型で選抜した後代系統の抽苔株率(%)は、原系統よりも低く、抽苔耐性が改善されている(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 開発したDNAマーカーは、短期間で効率的に抽苔耐性系統を選抜できる。
  • 選抜母集団に"a"とそれ以外のハプロタイプ("g"あるいは"o")を含む場合に限り、抽苔耐性の効率的な選抜ができる。

具体的データ

表1. 日本のテンサイ育成系統におけるBvBTC1座のハプロタイプの変異,図1. DNAマーカーによるBvBTC1座の遺伝子型のパターン,表2. 育成系統における抽苔耐性とBvBTC1座の遺伝子型の関係,表3. BvBTC1座に多型がみられる原系統と遺伝子型で選抜した後代系統の人為春化処理法により発生した抽苔株率(%)(2019年)

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2014~2019年度
  • 研究担当者:黒田洋輔、髙橋宙之、岡崎和之、松平洋明、田口和憲
  • 発表論文等: