天ぷら衣の吸油を低減する硬質小麦の不溶性画分由来の新規素材

要約

小麦澱粉、グルテンを製造する工程で生じる未利用資源の不溶性画分は吸油性が低い。本画分を餃子の皮に被覆あるいは天ぷら衣の原料に添加することにより、揚げ調理による吸油を低減できる。

  • キーワード:小麦粉、低吸油、天ぷら衣、未利用資源、フードロス削減
  • 担当:北海道農業研究センター・畑作物開発利用研究領域・農作物評価利用グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

小麦粉から成る生地を水洗し、グルテンを分離した残りの洗液の沈殿物から小麦大粒子澱粉画分を比重差で分離する工程で生じる不溶性画分は食用への使途が無い。長い間にわたりグルテン、小麦澱粉製造業者からはこの不溶性画分の食用への有効利用が強く望まれていた。そこで本研究ではこの不溶性画分の特性を生かした食用への有効利用方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 超強力粉から分離した本不溶性画分は細胞壁断片の表面に小粒子澱粉と大粒子澱粉がタンパク質や細胞膜を介して非共有結合により結合して覆う状態で存在する(図1)。
  • 強力粉から分離した本不溶性画分の凍結乾燥物と蒸留水から成るバッター状の生地を油で揚げた天ぷら衣(揚げ玉状で調製)は通常使用される市販薄力粉のものよりも吸油率が低く、本不溶性画分は吸油性が低い素材である(図2)。
  • 超強力粉から分離した不溶性画分を冷凍保存したものを解凍し、餃子の皮に被覆することにより、揚げた餃子の皮の吸油率が低減する(図3)。
  • 市販薄力粉に「ゆめちから」「みのりちから」「きたほなみ」から調製した本不溶性画分の凍結乾燥物を添加し、調製したバッター状の生地を油で揚げた天ぷら衣(揚げ玉の形状で調製)は不溶性画分無添加のものより吸油率が低く、特に超強力小麦の「ゆめちから」および「みのりのちから」由来の不溶性画分は吸油性の低減効果が高い(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本不溶性画分は小麦粉を原料とするバッター状生地の吸油性低減にも活用できる。
  • 本試験のバッター状の生地はダマをなくすために、サンプル粉に水を添加し、室温で生地が均一なるまで撹拌したものを使用している。
  • 天ぷら衣を作成する際、ベースとなる小麦粉は購入後から時間が経っていないものを使用するのが望ましい。時間が経つと天ぷら衣(揚げ玉)が購入当時よりも極端に平べったく中が空洞化した形状になり食感、試験結果に影響を及ぼすことがある。

具体的データ

図1 超強力粉から分離した不溶性画分(凍結乾燥)の電子顕微鏡観察(600倍),図2 不溶性画分の衣の低吸油性,図3 不溶性画分の餃子の皮への被覆による吸油率の低減効果,図4 不溶性画分の添加よる天ぷら衣の吸油率の低減効果

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:長澤幸一、八田浩一、伊藤美環子、寺沢洋平
  • 発表論文等:長澤ら、特願(2020年10月9日)