カボチャ品種の高貯蔵性を推定する果実の糖比率指標

要約

カボチャ品種の貯蔵前のスクロース含量に対するグルコース含量の比(G/S比)は、高貯蔵性品種で有意に低く、長期(90日間)貯蔵後のデンプン含量と高い負の相関がある。本指標を用いることにより、カボチャ品種の貯蔵性を貯蔵前に推定できる。

  • キーワード:カボチャ、貯蔵性、可溶性糖、デンプン、指標
  • 担当:北海道農業研究センター・ 作物開発研究領域・作物素材開発・評価グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

国内のカボチャ供給は冬期から春期まで長期の端境期となる。その期間は、海外からの輸入に依存しており、輸入量は国内のカボチャ流通量の約4割に達する。近年、カボチャの加工用途が広がりを見せる中、加工業者からは国産カボチャの周年供給が望まれており、秋に収穫して端境期にも甘さが維持された品質で供給可能な高貯蔵性カボチャが注目されている。そのため、高貯蔵性品種の育種や、流通上での長期貯蔵用カボチャの選定に利用できる指標が求められている。カボチャの貯蔵性には果実の糖代謝が関わり、収穫時のデンプン含量が高く、長期貯蔵(90日間)後もデンプン含量が高く保持されることが必要であるが、果実内デンプン含量の測定には時間と労力を要する。そこで、より容易な方法で貯蔵性を推定できる指標を開発する。

成果の内容・特徴

  • カボチャは、貯蔵中に果実内のデンプンが分解されることによってデンプン含量が低下し(図1)、その糖から、可溶性糖が生産され、スクロース、グルコースおよびフルクトースが増加する(データ略)。
  • 種苗会社および市場評価による貯蔵性の異なる品種を比較すると、高貯蔵性品種は貯蔵前の果実のデンプン含量が高く、長期(90日間)貯蔵後にも貯蔵性が中程度の品種よりもデンプン含量は多い傾向がある(図1)。
  • カボチャ果実のスクロース含量に対するグルコース含量の比(G/S比)は、高貯蔵性品種では貯蔵前および貯蔵初期に低い値を示す(図1)。
  • 栽培年により、果実内デンプン含量および可溶性糖含量に関する品種間の相対関係は変動するが、貯蔵前の果実内G/S比は、その年の各品種の60~90日間貯蔵後のデンプン含量に関する相対関係とほぼ一致する(図1)。
  • 貯蔵前の果実内G/S比はカボチャ品種の貯蔵性を有意に区別できる(表1)。また、カボチャ品種の貯蔵前の果実内G/S比は、長期(90日間)貯蔵後のデンプン含量と高い負の相関がある(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はセイヨウカボチャのデータである。
  • 同条件で栽培した品種ごとの貯蔵性の優劣を、貯蔵前に予測することができる。
  • 育種過程において、貯蔵前のG/S比を貯蔵性の高い個体の選抜指標に利用できるか否かは、未検討である。
  • G/S比を得るには可溶性糖類測定用の分析機器等を要するが、糖含量(濃度)の比率で表せるため、果実重量を測定することなく、容易に多検体を分析できる。

具体的データ

図1 2016, 2017, 2018年産の貯蔵性の異なるカボチャ品種の貯蔵(10°C)中の果実のデンプン含量(A, B, C)とスクロース含量に対するグルコース含量の比(G/S比)(D, E, F)の変化,表1 2019年産セイヨウカボチャ品種の果実のグルコース含量/スクロース含量(G/S)比,図2 2019年産セイヨウカボチャ品種の貯蔵前果実のG/S比と貯蔵(10°C)90日のデンプン含量の相関

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2020年度
  • 研究担当者:吉田みどり、嘉見大助、杉山慶太
  • 発表論文等:
    • 吉田ら(2019)農研機構研究報告、2:45-55
    • 吉田ら(2021)北農、88:2-6