LAMP法によるジャガイモシストセンチュウ類2種の識別技術

要約

形態識別が困難であるジャガイモシロシストセンチュウとジャガイモシストセンチュウのDNAをそれぞれ特異的に増幅することにより、これら2種を識別するための技術である。LAMP法を用いることで、簡便かつ迅速に増幅結果を目視で確認できる。

  • キーワード:線虫、ばれいしょ、Globodera、LAMP
  • 担当:北海道農業研究センター・生産環境研究領域・線虫害グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ジャガイモの重要害虫であるジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida:以下 Gp)が北海道の一部で発生しており、国による緊急防除が実施されている。本種の近縁種であるジャガイモシストセンチュウ(G. rostochiensis:以下 Gr)はすでに道内に広く発生しており、同所的に発生している場合もある。これら2種を形態により識別することは難しいため、実験室レベルで識別するためのマルチプレックスPCR法がすでに開発・利用されている。PCR法はPCR装置を要するほか、DNA増幅結果の確認のために電気泳動を行う必要があるが、一定の温度処理でDNA増幅可能で、増幅結果を目視ですぐに確認できるLAMP法が適用できれば、PCR法よりも簡便かつ迅速な識別が可能となる。そこで、本研究では、GpおよびGrに由来するDNA断片をLAMP法によりそれぞれ特異的に増幅することで、これら2種を識別するための技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本技術は、ミトコンドリアDNA非コード領域を標的として新規に設計したGp特異的およびGr特異的プライマーセットを用いる(表1)。
  • 市販のLAMP試薬を用いて、上記プライマーセットおよび線虫の粗抽出DNA(2019年普及成果情報「緊急防除の効率化に貢献するジャガイモシストセンチュウ類2種の同時診断技術」に従って抽出)を加えた反応液に対して60~63°C・60分間の熱処理を加えることで、Gp検出用ではGp由来のDNAのみ、Gr検出用ではGr由来のDNAのみが特異的に増幅する(表2)。
  • 市販の目視・検出用試薬を用いることで、DNA増幅の有無を目視で確認することが可能であり、ブラックライトで照射することでより鮮明に確認できる(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は主にジャガイモシストセンチュウ類と疑われる雌成虫またはシストの線虫種の識別に活用することが期待される。
  • 本技術により種の識別を行う場合、対象サンプルのほかに陽性対照サンプルおよび陰性対照サンプルを含めて試験を行う必要がある。
  • 市販の試験研究用LAMP試薬を用いる場合、試験研究用途に限り本技術を適用できる。

具体的データ

表1 GpおよびGrに対する種特異的LAMPプライマーセット,表2 Globodera属およびHeterodera属シストセンチュウを供試したLAMP法の結果,図1 LAMP法によるDNA増幅結果の目視による確認

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(北海道農産基金協会生産流通振興事業)
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:酒井啓充
  • 発表論文等:酒井、特願(2020年4月28日)