土塊分析による土壌構造の簡易評価
要約
土塊分析は、圃場から採取した土壌を砕土したのち、得られた土塊のサイズ分布から土壌構造を評価する手法である。土塊のサイズ分布は、土壌構造の評価に従来用いられている粗孔隙率や乾燥密度等と相関があり、特別な装置を使用することなく土壌構造を簡易に評価するのに有効である。
- キーワード:孔隙率、土塊分析、土壌構造、土壌診断、土性、保水性
- 担当:北海道農業研究センター・生産環境研究領域・土壌管理グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
土壌構造は、土壌の保水性や排水性に影響する重要な土壌物理的特徴である。土壌構造を評価する従来法には粗孔隙率や乾燥密度などの測定があるが、専門的な知識とともに特殊な装置を必要とするなどの問題があり、専門家でなくとも簡易に調査できる技術の開発が求められている。一方、海外では土塊分析を用いて土壌構造を簡易に評価する様々な方法が提案されているが、我が国ではほとんど利用されていない。そこで、本研究では土塊分析の有効性を従来法との比較から検討し、農業生産者や農業技術指導者等が現場で簡易に土壌構造を評価する手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 土塊分析を実施するには、耕起前または収穫後に圃場から縦横15~20cm、深さ20cmの土壌をスコップ等で採取する。次に採取した土壌を45Lの厚手(0.05mm以上)のポリ袋に入れて約1mの高さからコンテナ内に敷いた板の上に3回落として砕土する。次に31.5mmと4.75mmの篩で大中小のサイズに分けてそれぞれの画分の重さを量り、各画分の重量比を求める(図1a)。
- 土塊分析用の土壌を採取する際には、土塊サンプラーを使用すると作業が容易である(図1b)。
- 北海道の圃場56地点(重埴土22,シルト質埴土1,軽埴土30,埴壌土1,砂質埴壌土2)での調査では、土塊小割合(4.75mm以下)と土塊大割合(31.5mm 以上)は、土壌構造を評価する従来の測定項目である粗孔隙率、易有効水、有効水、固相率と有意な相関があり、土塊小割合または土塊大割合から大まかに土壌構造の状態を把握できる(表1、図2)。また、土塊小割合と土塊大割合には強い相関(r=-0.883)があり(データ省略)、どちらかの画分割合だけで評価することが可能である。
- 土塊小割合と乾燥密度の関係は全試料で比較すると有意な相関は認められないが(表1)、砂割合の高い試料は乾燥密度が高いわりに壊れやすい性質があることを考慮して、特に砂割合の高い試料(50%以上、図3a破線内の試料)を除いて比較すると有意な相関が認められる(r=-0.504)。また、重埴土に限るとより高い相関が得られる(図3b、r = -0.663)。同様の傾向は固相率との関係にも認められる。これらのことから、土性が類似した圃場間で比較するとより正確に土壌構造の差異を評価できることが分かる。
成果の活用面・留意点
- 土塊分析の作業は単純であり専門家でなくとも実施可能である。
- 土塊サンプラーは、大起理化工業やエンドウ理化などから一式3~4万円程度で購入できる。
- 本調査事例では、土塊を風乾後に砕土している。土塊採取直後にオンサイトで実施することも可能であるが、土壌水分が多すぎると土塊は壊れずに変形してしまい評価するこができない。指で押して土塊表面が変形する場合は風乾してから砕土するとよい。採取直後と風乾後で土塊の壊れやすさにどの程度差異があるかは今後の研究で把握する必要がある。
- 土塊分析による土壌物理性の診断基準値の策定は今後の課題であるが、土性を考慮して作成することが望ましい。特に砂割合の高い試料は土塊が壊れやすいので留意する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)、H25補正「革新プロ」、28補正「経営体プロ」
- 研究期間:2014~2016年度
- 研究担当者:岡紀邦、森本晶、竹本敏彦、中村卓司、大友量、八木岡敦、君和田健二、岡﨑圭毅
- 発表論文等:
- 岡ら(2021)土肥誌、92(2):200-206
- 岡、竹本(2019)北農、86:112-115
- 竹本(2019)農研機構技報、3:37