楽な姿勢で高能率に樹冠下草刈ができる果樹園用の歩行型草刈機
要約
長いハンドルを備え、樹冠下幹周部分も楽な姿勢で高能率に草刈作業が出来る歩行型草刈機。樹列に沿ってまっすぐ走らせるだけで樹冠下幹周部分の草刈ができ、樹冠下幹周部分の草刈作業時間を刈払機より約5割低減できる。
- キーワード:草刈機、歩行型、果樹園、樹冠下、幹周
- 担当:農業技術革新工学研究センター・総合機械化研究領域機械・果樹生産工学ユニット
- 代表連絡先:電話 048-654-7000
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
樹園地の草刈作業においては、通路部分は乗用草刈機等により比較的高能率に草刈作業ができる一方、樹冠下幹周部分については作業空間が狭いため、一般的に刈払機による草刈作業か除草剤散布が行われている。枝を避けながらの刈払機による草刈作業は能率が低く、また、腰をかがめる等の困難な体勢も強いられる重労働であり、除草剤散布も動力噴霧機等を用いた手散布で行われることが多く、低能率で農薬被ばくの危険性を伴う。そこで、作業者が楽な姿勢で高能率に果樹園の樹冠下幹周部分の雑草を刈り取ることができる歩行型草刈機を開発する。
成果の内容・特徴
- 長い操作ハンドルを備えた刈幅300mmの歩行型法面用草刈機をベースに、草刈機本体の主草刈部の他に車体側方にオフセット草刈部を追加することで刈幅を460mmに拡大した歩行型草刈機(以下、開発機)である。
- 開発機は、エンジン、主草刈部、オフセット草刈部、走行部、操作ハンドルから構成される(図1)。オフセット草刈部は果樹の幹等の障害物にぶつかると車体側へ避ける機構となっているため、開発機を樹列に沿ってまっすぐ走らせるだけで、樹冠下幹周部分の草刈ができる(図2)。
- 草刈面積あたりの作業時間は、刈払機が14 s/m2、開発機が7 s/m2であり、刈払機より作業時間を約5割低減できる(図3)。
- 開発機を用いた草刈作業中の心拍増加率は50%未満の軽作業であり、作業姿勢も刈払機より、筋骨格系に有害なつらい作業姿勢(OWAS法によるAC2以上)の時間割合を約5割低減できる(表)。
- 開発機は法面の草刈作業にも利用できる。
普及のための参考情報
- 普及対象:リンゴのわい化栽培等を行う果樹生産者。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の果樹栽培地域等。市販化5年間で、720ha、1000台(リンゴ生産者約40,000戸の約2%である800戸とその他樹種生産者200戸)。
- その他:2017年度以降に市販開始予定である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、緊プロ
- 研究期間:2012~2016年度
- 研究担当者:大西正洋、太田智彦、塙圭二、深井智子、吉井秀夫((株)クボタ)、木村重則((株)クボタ)、若林宗平((株)クボタ)、浅川知則(岩手農研セ)、楢本克樹(長野果樹試)
- 発表論文等:大西ら「歩行型草刈機」特願2016-65812(2016年3月29日)