高速で高精度に施肥が行える畝立て同時二段局所施肥機
要約
畝立てと同時に肥料を畝内の上層と下層の二カ所に局所施肥する機械である。GNSSと傾斜角度センサで傾斜の影響を排した車速連動施肥により施肥量の変動を減らすことができる。作業速度1.1m/sでの作業能率は約30a/hである。
- キーワード:キャベツ、二段施肥、GNSS、環境保全、高速
- 担当:農業技術革新工学研究センター・総合機械化研究領域・野菜生産工学ユニット
- 代表連絡先:電話048-654-7000
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
キャベツの生産地で普及している、接地輪により施肥ロールの回転を制御する畝立て同時局所施肥機は、土壌条件やほ場の傾斜の影響により接地輪の回転にムラが生じ施肥量がバラつくほか、初期生育の確保を目的として畝天面に散布される肥料が風雨により流亡する等の諸課題を抱えている。そこで、全地球衛星測位システム(GNSS)と傾斜角度センサを利用し、傾斜の大きいほ場でも車速に連動した精度の高い施肥を行い、キャベツの生育に効果的な畝内位置へ二段の局所施肥を行うことで肥料の流亡を防ぎ、環境負荷を低減できる畝立て同時施肥機の開発を行う。
成果の内容・特徴
- 畝立て同時二段局所施肥機は、事前にロータリ耕耘を行ったほ場において、畝立てと同時に畝内の上層部と下層部の二段に肥料を局所施肥する3条用の作業機で、条間45cm仕様と、60cm仕様がある(図1、表1)。
- 肥料操出部は、低コストGNSSアンテナ、傾斜角度センサ、下層用として各畝に対応する肥料ホッパ3台、上層用として肥料ホッパ1台を備え、上層用ホッパは三ツ口の漏斗で各畝に肥料を分配する。GNSSと傾斜角度センサにより、傾斜地も考慮した車速連動となっている。粒状化成肥料を対象とし、最大繰出し量は、上層施肥で30kg/10a、下層施肥で300kg/10aまで設定できる(最高作業速度である1.4m/sの場合)。なお、これらを制御するコントローラは、トラクタの運転席の近くに設置する。
- 肥料の繰出精度は、平均傾斜角度7°のほ場において、作業速度0.7~1.4m/sの範囲で傾斜の上下方向に作業を行った場合、設定繰出量に対する平均誤差が、上層で0.1~1.6%、下層で0.4~2.8%であり、高速でも安定した精度で肥料の操出しが行える(表2)。
- 畝成形部は、リッジャ、PTOの駆動で回転する転圧ローラ、接地輪を備え、1前部リッジャで作溝、2溝底へ下層の局所施肥(畝天面から深さ約15cm)、3後部リッジャで土を寄せながら上層の局所施肥(約3~8cm、苗の種類により変更)、4転圧ローラで畝表面を転圧、の順で畝の成形が行われる。45cm仕様の畝形状は、天面幅、裾幅、畝高さがそれぞれ約15cm、35cm、13cm(60cm仕様はそれぞれ約30cm、50cm、15cm)の台形形状である(図2)。
- 枕地を含む長辺72m、短辺47mのほ場において、上層と下層の合計施肥量を99kg/10aとし、平均作業速度1.1m/sにて連続作業を行った場合、作業能率は60cm仕様で約30a/hである。
普及のための参考情報
- 普及対象:キャベツの大規模生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:丘陵地帯のキャベツ産地、全国3,400ha(導入可能面積34,100ha×10%(導入割合))、100台(5年間)
- 単年度のキャベツ作において、下層の施肥量を調節して総施肥量を削減した場合でも、慣行と同等の結球重が得られた事例がある。なお、本機を用いて施肥量の削減を行う場合、普及指導部局と相談の上で取り組むことが推奨される。
- その他:2018年度末に市販化予定。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、緊プロ
- 研究期間:2013~2017年度
- 研究担当者:千葉大基、大森弘美、鈴木渉、岡田俊輔、原田一郎、春山清利(上田農機)、庄司浩一(神戸大学)、井坂博道(タイショー)
- 発表論文等:千葉ら「粒状物の流下検出装置」特願2017-89756(2017年4月28日)