情報基準としてシステム間データの統合利用を支援する農作物語彙体系CVO
要約
農作物語彙体系(CVO)は、食用農作物を定義する機械可読の語彙体系であり、農作物名、別名、英名、学名の情報を持つ。CVOを情報基準とした利用場面として、データの統合表示や検索の高度化への適用があげられる。
- キーワード:農作物語彙体系、情報基準、データ統合利用
- 担当:農業技術革新工学研究センター・高度作業支援システム研究領域・高度情報化システムユニット
- 代表連絡先:電話048-654-7000
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
フードチェーンでの食の安全性を確保するためには、生産から消費に至る農産物の履歴データを辿り、農薬等の基準値と照合する必要がある。しかし、データの管理組織が異なると同じ農作物のデータでも異なる名称で管理されることがあり、コンピュータがデータ比較などの処理を適切にできない原因となる。この場合、情報基準として、農作物の名称を定義する語彙体系が整備されていれば("胡瓜"と"キュウリ"は同じ意味)、データを連携して解析することが可能となる。本研究では、これまでに開発事例が無い、農作物語彙体系(CVO)を構築するとともに、CVOの普及を促進するために利用場面を提案する。
成果の内容・特徴
- CVOは、食用農作物を対象とする機械可読の語彙体系である。CVOの農作物は、農作物名、別名、英名、学名の情報を持つ(図1)。農作物名は、植物学的分類に基づく名称(図1"キュウリ(総称)")や、部位等の属性で分類した名称(図1"キュウリ(葉)")である。CVOは、2種類の農薬基準データにある1,249の農作物名(農薬登録における適用作物名、食品残留農薬基準における食品名)を含む。
- CVOは「ITシステムで用いる農作物の名称に関する個別ガイドライン」で優先使用が推奨された農作物名リスト(以下ガイドラインリストとする)、その他政府発行語彙リスト、国際的語彙リストと連携しており、CVOを基準とした相互参照が可能である(図1)。例えば、フードチェーンの農作物データ名(例;"胡瓜")をCVO農作物(例;"キュウリ(総称)")に対応付けて、該当する農薬基準におけるデータ名(例;"きゅうり"、"きゅうり(花)")を参照することで、農薬基準値の検索が容易になる。
- CVOに連携する外部語彙の詳細情報は、公開ページ(http://www.cavoc.org/cvo/)のリンクをたどることで得られる。例えば、"キュウリ(総称)"ではNCBI Taxonomy IDのリンクによりキュウリの遺伝的背景が確認できる(図2)。
- 農作物の栽培や経営等の指標となる、農林水産省の統計データは、情報基準となるCVO農作物名にデータ名を対応付けることで、統合表示が可能となる(図3)。
- 農作物名から、その同義語となるCVOの農作物名を返すサービスをCVOの公開ページより提供する。本サービスを利用することで、既存データの名称を変更することなく、CVOを情報基準としたデータ処理が可能となる。さらに、本サービスの利用が拡大することで、CVOに対応付けられたデータが増え、図3で示すような統合表示や解析が容易となる。
普及のための参考情報
- 普及対象:ソフトウェア開発会社、食用農作物に関心を持つ消費者、研究者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:CVOのデータは農業データ連携基盤(WAGRI)に実装されている。今後WAGRIに集積するデータの連携にCVOが活用される予定である。
- 農薬登録情報の検索を行うWindowsアプリケーションソフトウェア「ACFinder」及びウェブサイト「携帯農薬検索実験室」へ提供したCVOのデータは、科名や別名による対象作物検索など検索システムの高度化に利用されている。
- CVOのデータは公開ページからCSV、RDF形式でダウンロードできる。
具体的データ

その他
- 予算区分:その他外部資金(SIP)
- 研究期間:2014~2018年度
- 研究担当者:竹﨑あかね、朱成敏(国立情報学研究所)、武田英明(国立情報学研究所)、吉田智一
- 発表論文等: