投稿型レシピデータを活用した開発農畜産物の普及に資する調理レシピ選定法

要約

投稿型レシピデータを活用して、アンケート等で明らかとなった消費者ニーズや、新規開発農畜産物の特性に合致した調理レシピを選定する手法である。農畜産物やその加工品の開発者や普及担当者が、食材利用が少ない品目の普及に向けて調理レシピを選定する際に利用できる。

  • キーワード:投稿型調理レシピデータ、テキストマイニング、アンケート、新規開発農畜産物、乳酸菌Lactococcus lactis H61ヨーグルト
  • 担当:農業技術革新工学研究センター・高度作業支援システム研究領域・高度情報化システムユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8011
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

開発した農畜産物やその加工品(以下農畜産物とする)の普及には、農畜産物の嗜好や開発農畜産物の特性に合致した家庭での調理レシピの提案が有効である。しかし、一般に知られていない農畜産物に関しては、アンケートだけでは調理レシピにまで踏み込んでニーズを明らかにするのは困難である。本研究では、投稿型調理レシピデータを活用し、アンケートで明らかとなった消費者ニーズや、新規開発農畜産物の特性にあった調理レシピを選定する手法を開発する。併せて、本手法を乳酸菌Lactococcus lactis H61ヨーグルト(以下H61ヨーグルトとする)に適用する。

成果の内容・特徴

  • 前処理として、投稿型レシピサイトの調理レシピを食材構成によりクラスター分析を用いて分類し、投稿レシピ数、調理感想数からその人気を推定する(図1 Step1)。例えば、ヨーグルトでは3分類した調理レシピ群から、デザートの人気が最も高く、次いで菓子・パン、おかずと推定する(表1)。食材利用が少ないヨーグルトでは(図1 参考情報1)人気レシピの提案で需要拡大が期待できる。
  • アンケート等で明らかとなった消費者ニーズに合致した調理レシピを選定する(図1 Step2-1)。調理感想に、消費者ニーズに関連した語を含む調理レシピを抽出し、食材の特徴を明らかにした上で「消費者ニーズに合致した調理レシピ」候補とする。例えば、健康志向のヨーグルト喫食者(図1 参考情報1)に対して訴求効果が高い調理レシピ候補として、調理感想に、"ヘルシー"、"健康"等の健康に関連した語を含む「健康レシピ」を抽出する。表1のカテゴリ3を対象にすると、バター等の油脂を使わない「健康菓子レシピ」が選定できる(表2)。
  • 開発農畜産物の特性を生かした調理レシピを選定する(図1 Step2-2)。例えば、加熱しても肌の改善効果が期待できるH61ヨーグルトについては(図1 参考情報2)、調理手順に、"熱"、"焼"等の加熱に関連した語を含む「加熱調理レシピ」をデザート、菓子・パン、おかずごとに選定し、「特性を生かした調理レシピ」候補とする(表3)。

成果の活用面・留意点

  • ヨーグルトは食材としての利用が普及しておらず、アンケートで調理レシピに関するニーズを明らかにするのは困難である。
  • 20~60代女性が主要な利用者であり情報発信力が高い投稿型レシピサイト「クックパッド」の投稿型レシピデータを解析した結果である。「クックパッド」のデータは国立情報学研究所の情報学研究データレポジトリ(https://www.nii.ac.jp/dsc/idr/index.html、参照 25 Nov 2018)から研究者に無償提供されている。
  • 農畜産物の開発者や普及担当者が、食材利用が少ない品目の普及に向けて調理レシピを選定する際に活用できる。

具体的データ

図1 農畜産物に対する消費者ニーズや、新規開発農畜産物の特性に合致した調理レシピ選定手法とH61ヨーグルトへの適用,表1 食材構成により分類したヨーグルト調理レシピ(Step1),表2 ヨーグルトの健康菓子レシピの特徴的食材(Step2-1),表3 開発農畜産物(H61ヨーグルト)の特性に合致した加熱調理レシピ(Step2-2)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:竹崎あかね、山本淳子、木元広実、河野恵伸
  • 発表論文等:竹崎ら(2019)農研機構研究報告 農業技術革新工学研究センター、3:1-15