農作業事故事例の詳細・要因・対策をウェブ上で閲覧できる検索システム

要約

農作業事故事例について現地での詳細調査を行い、事故要因や対策方法等を分析した個別報告を、ウェブ上で検索・閲覧できるシステムである。事故要因は人、機械・用具、作業環境、安全管理にわけて詳細に分析され、類似事故の防止に向けた多面的な対策の検討が可能である。

  • キーワード:農作業事故、事故調査、事故分析、安全対策、検索
  • 担当:農業技術革新工学研究センター・安全工学研究領域・安全技術ユニット
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

農作業事故については、死亡災害の就業人口あたり発生件数が他産業に比べて突出しており、大きな問題である。重大事故は様々な要因が重なって発生するため、実効的な対策には、これらを詳細に調査・分析した事故事例の活用が不可欠であるが、農作業事故では他産業に比べて公開されている報告が少なく、内容も全ての事故要因は記載されていない等、多面的な対策の検討には不十分であることから、従前の安全対策は人的要因(不注意や誤操作への注意喚起等)に対する啓発が主である。
そこで、現地関係機関と連携し、機械等の起因物や事故現場の確認、被災者からの聞き取り等による詳細な事故調査を行い、事故要因や対策方法等を多面的に分析した個別報告を、ウェブ上で作目・事故形態・機械用具名称から検索できるシステム(以下、本システム)を開発する。

成果の内容・特徴

  • インターネットに接続された端末からウェブブラウザでアクセスし、作目別の事故事例一覧から、事故形態や機械用具名称で対象を絞り込み、該当する個別報告をPDFファイルで閲覧できるシステムである(図1)。各個別報告は、北海道農作業安全運動推進本部と連携し、農協等現地機関の協力により2011年度から詳細調査を行った事故事例(公開時182件)で構成される。
  • メインページで作目を選択すると、各作目に関連する事故事例の概要一覧が表示される。一覧の上にあるプルダウンメニューから、事故形態、機械用具名称で事故事例の絞り込みもできる。各事例の「個別報告No.」を選択すると、個別報告のPDFファイルが表示される(図2)。
  • 個別報告は、事故の概況、救命・治療の経緯、事故原因、事故防止対策、事故機や現場の状況説明図で構成される。事故原因については、人、機械・用具、作業環境、安全管理(作業方法等)の各要因に該当するものを分析、記載しており、それぞれの観点から、農作業現場に潜在する問題点の把握が可能である。事故防止対策については、被災者による実際の事故後の対策を改善事例として紹介するとともに、他に望ましい対策も併記し、類似事故の防止に向けた、従来の人的対策(注意喚起等)に依存しない、実効的かつ多面的な対策の検討が可能である。
  • 分析は農作業安全の知見を有する研究者複数名が関連資料を踏まえて行い、現地関係機関が事前に確認を行うことで、内容の適切性の確保につなげている。なお、個人情報は含まれない。
  • インターネットでの公開により、常に最新の事故情報の追加・提供を広く行うことが可能である。検索機能はHTMLベースで構成されており、主要なウェブブラウザで動作する。

普及のための参考情報

  • 普及対象:生産者、普及指導機関、農協、自治体、機械用具製造販売業者、労働安全関係者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国。
  • その他: 2020年度よりウェブサイト「農作業安全情報センター」で公開。マニュアルには検索・閲覧手順、事故対策への活用方法等を記載。閲覧にあたっては利用規約を遵守する必要がある。個別報告は公開後も適宜追加予定。2019年度より試行版の運用を行っており、北海道では安全啓発パンフレット(生産者全戸配布)で周知されているほか、全国各地の農作業安全研修会等でも個別報告の活用実績がある。

具体的データ

図1 農作業事故事例検索システムの概要,図2 作目別事故事例一覧(左)と個別報告(右)の例

その他