堆肥脱臭における堆肥が吸着したアンモニウム態窒素の硝化・有機化促進

要約

堆肥脱臭用の吸着堆肥に、1次発酵終了堆肥を戻し堆肥として10%程度添加した牛ふん堆肥を利用することで、吸着したアンモニアの硝化が促進されると共に、1ヶ月程度好気状態に保つことで有機化を促進できる。

  • キーワード:堆肥化、堆肥脱臭、アンモニア、硝化、有機化
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・畜産環境・乳牛グループ
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

堆肥脱臭システムは、家畜ふんの堆肥化から発生するアンモニアを主体とする臭気を脱臭槽内で牛ふん堆肥に吸着させることで低減化できる。脱臭槽内の牛ふん堆肥は、アンモニアが飽和状態になった時点で、新たな材料と交換する必要がある。牛ふん堆肥に吸着したアンモニアを主とした臭気は、硝化や有機化を経ることで低臭気物質に変換され、堆肥脱臭効果の長期化と低減率向上を図ることができる。そこで、活性汚泥あるいは戻し堆肥添加が堆肥に吸着したアンモニアの動態変化へ及ぼす影響を解明し、脱臭用堆肥の調整方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • アンモニアを吸着させたオガクズ牛ふん堆肥(水分61.1%、発酵期間:1次4週間・2次6ヶ月程度でC/N比=16.8、アンモニウム態窒素濃度3、357 ppm)に活性汚泥(水分98.6%、C/N比=7.1、重量当たり5%、10%、20%)、戻し牛ふん堆肥(4週間の1次発酵終了堆肥、水分64.5%、C/N比=22.4、重量当たり10%、20%、30%)を添加し35°Cの条件において300mLビーカー内で静地培養(3反復)した結果、全窒素濃度(初期1.78~2.1%)は49日後でも減少はなく脱窒反応は起こらない(図1)。
  • アンモニウム態窒素は3日以内に8~9割減少し、処理区と無添加区の間に有意差は認められない(図2)。試験開始後3日間のアンモニア酸化速度は、活性汚泥区が一番速く無添加区の約3倍である(データ略)。
  • 硝酸態窒素と亜硝酸態窒素の合計濃度は、初期濃度に比較して無添加区で21日目に有意に増加するに対し、活性汚泥添加区及び戻し堆肥添加区は3~7日目で有意に増加し硝化促進効果が認められる(表1)。
  • 亜硝酸態窒素と硝酸態窒素の合計濃度は、無添加区と活性汚泥添加区は49日目においても初期濃度に比較して有意に増加した状態であるが、戻し堆肥添加区では一度増加した濃度が減少し28日目以降は初期濃度と同等になる(表1)。
  • 有機態窒素濃度は無添加区及び活性汚泥添加区は初期値と49日目の値に有意差はほぼないが、戻し堆肥添加区では有意に増加し、戻し堆肥添加が有機化を促進する(表2)。戻し堆肥の添加割合が多いほど有機化が促進され、30%添加区28日目、20%添加区35日目、10%添加区49日目に初期濃度に比較して有意に増加する(表2)。
  • 吸着堆肥を農地還元した場合、吸着アンモニアを有機態窒素に変換することで地下水や大気への影響が緩和されること、また、資材添加量は少ない方が作業性が良いことから、脱臭用堆肥の調整には1次発酵終了牛ふん堆肥を10%程度添加すれば良い。

成果の活用面・留意点

  • 堆肥脱臭システムを既に導入或いは計画している行政、畜産農家、企業等が、脱臭槽に入れる臭気吸着用堆肥の調整に活用できる
  • 牛ふん堆肥を対象とした成果であり、異畜種堆肥を利用する場合には添加割合等に留意する。

具体的データ

図1 全窒素濃度の経時変化?図2 全窒素濃度に対するアンモニウム態窒素濃度の割合?表1 堆肥(乾物)重量当たりの亜硝酸・硝酸態窒素合計濃度の経時変化?表2 堆肥(乾物)重量当たりの有機態窒素濃度の経時変化

その他

  • 予算区分:委託プロ(生産システム)
  • 研究期間:2015~2016年度
  • 研究担当者:田中章浩、黒田和孝、古橋賢一
  • 発表論文等:Tanaka A. (2016) J. SASJ. 47(3):20-27