穂発芽しにくいソバ新品種候補「九州7号」
要約
ソバ新品種候補「九州7号」は春まき品種「春のいぶき」と比較し穂発芽しにくく、春まき適期および10日ほど遅まきの条件においても多収で、容積重が重い。夏まき栽培では、夏まき品種「さちいずみ」と比較し低収であるが栽培可能である。
- キーワード:6次産業化、ソバ、春まき、夏まき、穂発芽、抵抗性
- 担当:九州沖縄農業研究センター・作物開発利用研究領域・大豆・資源作物育種グループ
- 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
春まきソバは、需要の高まる初夏に新ソバを供給できる新たな作型として注目されており、「春のいぶき」の登場により暖地を中心に産地形成が進んでいる。しかし、収穫時期が梅雨にかかるため「春のいぶき」よりもさらに穂発芽抵抗性の強い品種が求められている。また、播種適期(暖地では4月上旬)に降雨等で播き遅れた場合大きく減収することが問題となっている。一方、春まき栽培と夏まき栽培の両方を行う産地も増えているが品種が異なるため、採種の負担増や野良生えなどによる品種交雑が深刻な問題となっている。実需者からは夏まき栽培で減収してもよいので春/夏まき両方で栽培可能な品種(春まきソバ品種の夏まき栽培)へ強い要望がある。さらに、2015年度から導入されたソバの新たな流通検査規格に対応するため、容積重が580g(2等基準)より重い品種が求められている。
そこで、上記問題の解決に資する新品種育成を行う。
成果の内容・特徴
- 「九州7号」は「春のいぶき」と比較し、圃場での立毛(表1)およびシャーレでの穂発芽検定(表2)において穂発芽しにくい。
- 「九州7号」は「春のいぶき」と比較し、育成地では春まき適期(標準播)および10日程度遅く播いた場合(遅播)においても多収である(表1)。
- 「九州7号」を夏まきした場合、標準品種「さちいずみ」の6割程度の子実重であるが春/夏まき両方で栽培可能である(表1)。
- 「九州7号」は「春のいぶき」と比較し春まき適期における容積重が重い(表1)。
- その他主要な農業形質(成熟期、草丈、倒伏程度等)と食味は「九州7号」と「春のいぶき」で同程度である(表1、3)
- 普及見込地域の福井県(春まき栽培)において、「九州7号」は現地標準品種の「キタワセソバ」と比較し多収で容積重が重く、成熟期は同程度である(表1)。
- 「九州7号」は、キタワセソバ、矢板在来、朝日村在来3、階上早生、常陸秋そば、戸隠在来1、関東1号、国東在来1の混合交配集団からの選抜で育成した品種候補である。
成果の活用面・留意点
- 暖地、温暖地、北陸の春まきソバ栽培地域で利用する。
- 夏まき栽培にも利用できるが、子実重は軽くなる。
- 「春のいぶき」より穂発芽しにくいが、高温・多雨条件では穂発芽が生じ、特に刈り遅れると多発するため適期収穫につとめる。
- ソバは湿害に極めて弱いため、排水の良い圃場を選び、排水対策を万全にすること。
- 脱粒性は改善されていないので、適期収穫(黒化率80%)につとめること。
- ソバも連作障害が生じることがあるため、過度な連作は避ける。
- 早まきする場合は晩霜に注意する。
- 種子の入手先は九州沖縄農業研究センター(本成果情報代表連絡先)に問い合わせる。
具体的データ

その他