ワクチンを核としたホオズキのウイルス病防除技術
要約
栽培中のホオズキに感染しているウイルス種を判別し、次作ではこれに対応する単独あるいは複数のワクチンを予め接種した親株の地下茎を苗として利用する。これにより、ウイルス病の症状が抑制され、品質が向上する。
- キーワード:ワクチン、ホオズキ、栄養繁殖、トバモウイルス
- 担当:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域・野菜病害虫管理グループ
- 代表連絡先:電話029-838-8916
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
ホオズキは、ナス科ホオズキ属の多年草で、種子あるいは栄養繁殖により主として中山間地域で栽培される。本作物には、タバコ微斑モザイクウイルス(Tobacco mild green mosaic virus: TMGMV)、トマトモザイクウイルス(Tomato mosaic virus: ToMV)が単独あるいは重複感染してえそ症状等を引き起こすことが知られている。それらウイルスは土壌伝染するため、実生由来の健全苗を定植しても感染し、被害が顕在化している。そのため、現行では主たる防除法として土壌消毒が実施されているが、ホオズキは中山間地域で栽培されていることに加えて、担い手の高齢化のために作業が大きな負担となっており、省力的かつ効果の高い防除法の開発が望まれている。ホオズキは専ら栄養繁殖によって栽培されるために、ワクチンを一旦ホオズキに接種すると後代まで効果が持続すると考えられる。そこで、TMGMVワクチンおよびToMVワクチンを用いた防除法を開発し、効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- TMGMV およびToMVを検出するためのRT-PCR法により、ホオズキに感染しているウイルス種を判別する。TMGMV あるいはToMVが検出された場合には、それぞれTMGMVワクチンあるいはToMVワクチンを選定し、TMGMV およびToMVの両方が検出された場合には、両ワクチンを選定する。
- ワクチン接種苗の作出方法は、選定したワクチンを地下茎を採取するための親株に接種し、慣行に従って栽培する。その親株から採取した地下茎をワクチン感染苗として利用する(図1)。
- TMGMV汚染圃場ではTMGMVワクチン苗を導入し、TMGMVおよびToMVの両ウイルスに汚染された圃場ではTMGMVおよびToMVの両ワクチンを導入するとウイルス病の症状が抑制される(表1)。
- TMGMV汚染圃場あるいはTMGMVおよびToMV汚染圃場に、それぞれに対応するワクチン接種苗を導入して慣行に従って栽培し切り花の品質を評価したところ、TMGMVワクチンあるいは両ワクチンを導入した区では無処理と比較して品質(表2)と収益(図2)が向上する。
普及のための参考情報
- 普及対象:ホオズキ生産者、公的機関のホオズキ栽培指導者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国のホオズキ産地に10ha以上
- ウイルス病非発生圃場にワクチン接種株を導入した場合、健全株と比較すると茎径、がく幅が小さくなる場合がある。
- 本技術の具体的な導入方法および問い合わせ先は、「ワクチンを核としたホオズキのウイルス病防除技術マニュアル」(平成30年度公開予定)を参照されたい。
具体的データ

その他